今から10年以上前、同期の子たちが扉をあけて、出ていった瞬間、私はやはり、そばにいた看護師さんの身体を借りて号泣しました。

もうそんなことはないと思っていたのに。

やっぱり泣いてしまった。今回は、後輩がそばにいてくれた。心強かった。


その反対のそばでは、囁きおじじが、「こういう時こそ毅然としていろ」といっていた。


この類の言葉を、このおじじさまはあの人に向けて、発していたのだろうな。

そして、あの人は、それを受け入れ、ずっと毅然とした態度を演じていた。


あの人は、一度、私にすっごい弱音を吐いたことがある。あの人の本心が見えた。

でもそれ以来私はあの人のそういう面を見ることは二度となかった。


色々なことを守り切れなかった自分が悲しいのだろうか。わたしは。

今の気持ちを表現すると、何なのだろう。


ひとそれぞれに生きていく道があり、そこに向かうことを阻止するつもりはありません。


でも、あの人がいなくなった環境で、私は、何かを失う。確実に。


残りの数日間のうち、引き継ぎと称する中で共有する時間がある。でも、同時進行で新年度の準備をする。

なかなかシフトしていかない。

「私がいなくなったら、大変よ。」とか、「私みたいにならないかどうか心配」とか色々なプレッシャーが与えられる中で、自分を見失わずにいなければならない。


失うかわりに、別の何か新しいものを手に入れられるようにしようと思う。