連立方程式の解法で、代表的な解き方は2つあります。
 
1.加減法
 
2つの方程式の1つの未知数に注目して、両辺に同じ数をかけ、それぞれの式の未知数の係数を等しくします。方程式をたしたり、ひいたりして未 知数を1つ減らします。
 
2.代入法
 
1つの方程式の1つの未知数を他の未知数で表し、それを他の式に代入しして未知数を1つ減らします。
 
どちらも目標はひとつです。
 
立式しやすくするために複数設定した未知数を、解くための条件がそろった段階で、今度は減らしにかかります。
方程式の数と未知数の数が等しくなった時点で解が求められるので、今度はどんどん文字を減らして文字が1つだけの方程式にするわけです。
 
問題を解くために、文字はどんどん使い、文字をどんどん減らす。

方程式のコツのひとつです。
 
さて、消去算の解き方も連立方程式の解き方と同じです。
加減法と代入法をひっくるめて消去法とも言います。
この消去法を使った算数の解き方が「消去算」です。
表し方は多少異なることもありますが、やっている内容はほとんど同じです。
 
具体的に見ていきましょう。
 
「えんぴつ10本とノート5さつの代金は750円です。えんぴつ12本とノート8さつにすると代金は1080円です。えんぴつ1本とノート1さつの値段はそれぞれいくらですか。」
 
えんぴつ1本の値段をえ、ノート1さつの値段をノとします。
 
え×10+ノ×5=750  (①)
え×12+ノ×8=1080 (②)
え×80+ノ×40=6000  (③ ①×8)
え×60+ノ×40=5400  (④ ①×8)
え×20=600(③-④)
 
よって
 
え=(600÷20=)30(円)、ノート90(円)
 
えをx、ノをyとするとそのまま連立方程式になります。
 
ちなみに、①は先に5でわり、
 
え×2+ノ×1=150
 
②は先に4でわり、
 
え×3+ノ×2=270
 
とした方がよいのは連立方程式も消去算も同じです。
 
また、学年や講師の指導法によっては、えを①、ノを△1などとおくこともあります。
 
では「消去算」と「連立方程式」はまったく差がないのでしょうか。
解法においては同じです。
しかし、発想というか、消去にいたる考えは少し意味合いが違ってくるかもしれません。

「○△△で24、○○△△△で39のとき、○はいくつですか。」
 
連立方程式で○1つはx、△1つはyとすると
 
x+2y=24  (①)
2x+3y=39 (②)
 
これは見た瞬間①の両辺を2倍して、xの係数をそろえます。
 
2x+4y=48(③)なので、(③-②から)y=9、xは(①にy=9を代入して)6です。
 
消去算でもほとんど同じですが、教え方は次のようになります。
 
○△△で24なので、
○△△|○△△で(24×2=)48
○○△△△△→48
○○△△△ →39
 
これで○の個数が2個ずつでそろったので、△の差で見て△1個は(48-39=)9
○+18→24なので、○は6です。
 
前にも少し書きましたが、
 
「等しいところに注目する」
「等しくして考える」
「一方にそろえて考える」
 
などは算数の大事な発想方法です。
前回まで○を使った算数独特の問題を見てきました。
 
今回は方程式に近い問題を見ていくことにします。
式だけ見れば、xが○に変わっただけに見える問題です。
 
途中に□がある計算についてはすでに扱いました。□をxとすれば、形だけは方程式です。ただし、その解法は移項や式変形ではなく、逆算が基本でした。
 
この途中に□がある計算を、式を作るところから始める問題のことを「還元算」といいます。つまり、還元算は1元1次方程式です(文字の個数がx1つだけの方程式)。
たとえば次のような問題です。
 
「ある数に5をたした数を5倍して5をひいて5でわると5になりました。はじめのある数を求めなさい。」
 
文章の最後が「~になりました」と結果がわかっていて、はじめの数量を求める問題が還元算です。最後からはじめにもどっていくわけです。
 
方程式の応用問題の立式は、問題にかいてあることをそのまま式に翻訳していきます。
 
はじめの数をxとすると、
 
「ある数に5をたした数を5倍」したので、5(x+5)
これから「5をひいて5でわると5」になったので、
 
{5(x+5)-5}÷5=5
 
です。
 
算数では上の式のxを□や①で表します。
 
{5(□+5)-5}÷5=5
 
です。
 
もっとも、そもそもの還元算的な解き方は、最後からさかのぼって、
5でわったら5になったのだからその前は25
5をひいて25になったのだからその前は30
5をかけると30になったのだからその前は6
5をたすと6になったのだからその前は1(はじめの数)
 
でしょうか。
 
さらにほぼそのまま方程式の問題は「消去算」です。
これはまさしく連立方程式です。xとyが、りんごとみかん、○1、△1に変わっているだけです。
 
また次回に続きます。
前回からの続きです。

「毎時45kmの速さで1時間36分かかる道のりを、毎時60kmの速さの自動車で行くと何時間何分で行きますか。」
 
ふつうに道のりを求めて、その道のりを毎時60kmで進んだときの時間を求めてもよいですが。
 
比を使うと
 
毎時45kmで行っても毎時60kmで行っても同じ道のりの話なので、道のり一定から速さと時間は逆比の関係です。
45:60=3:4なので、かかる時間の比は4:3です。
毎時45kmのとき、(1時間36分=)96分かかっています。
④は96分なので、③は(96÷4×3=)72分です。よって、1時間12分です。

「ふつうは24分かかる道のりを、今日はいつもより時速8km速くしたので8分速く着きました。いつもの時速は何kmですか。」
 
これも同じですね。
 
方程式では、求める時速をxkmとして、24/60x=(24-8)/60(x+8)です。
 
比では
 
ふつうと今日でかかった時間の比は(24:24-8=)3:2です。
道のりは等しいので、ふつうと今日の速さの比は2:3になります。
これを②、③とすると、差の①は時速8kmなので、いつもは②=時速16kmです。

「A町からB町まで往復するのに、行きは毎時3km、帰りは毎時5kmの速さで進むと往復3時間12分かかります。A町とB町の間の道のりは何kmですか。」
 
これまた同じです。もう使えるのではありませんか。
 
よろしければ、Thinking Time
 
 
 
 
 
 
 
 
解けましたか。
 
方程式ではふつうA町とB町の間の道のりをxkmとして立式します。
 
比では
 
道のりが等しいので、行きと帰りの時間の比は5:3です。これを⑤、③とします。
⑤+③は3時間12分なので、⑧は192分、⑤は120分=2時間です。毎時3kmで2時間の道のりなので、(3×2=)6kmです。

「Aが6分で行く距離をBは10分で行きます。Bが出発して12分後にAが追いかけると、Aは何分でBに追いつきますか。」
 
AとBの速さがわかっていれば旅人算の典型的な問題です。
この問題では速さがわかっていないので、まず速さの比を考えます。
Aが6分で行く距離をBは10分で行くので、速さの比は5:3です。
A、Bの速さを⑤、③とします。
 
旅人算的な解き方は、
Bは先に12分進んでいるので、Aが出発するとき、(③×12=)○36離れています。
○36を速さの差(⑤ー③=)②で追いかけるので、AはBに(○36÷②=)18分後に追いつきます。
 
まるっきり比で解くと、
AがBに追いついたとき、AとBは等しい道のりを進んだはずです。
このとき、かかった時間の比は速さの逆比の3:5です。
追いつくまでAは③の時間、Bは⑤の時間進んでいたので、(⑤ー③=)②が時間の差の12分です。
よって、①は6分なので、Aは(③=)18分で追いつきました。
 
算数の解き方は様々です。どれが正しいとか間違っているとか(根本的に間違っていれば別ですが)ありません。あるとしたら、どの方法が鮮やかなのか、またはどの方法が子どもにとってわかりやすいのかに尽きます。
一種宗教的なこともあり、線分図派はその他の解き方を邪教とし、面積図派はてんびんを安直な方法として忌み嫌ったりすることもあります。
自分の解き方、教え方にこだわりがあるのは悪くはないでしょうが、他を認めないのはどうでしょう。算数だからこそ柔軟に見る目、考える頭を持ちたいものです。あ、自戒を込めて。
 
やや難しめの問題でしめくくりましょう。麻布中の問題です。
 
「列車A、Bはそれぞれ一定の速さで、並行する線路の上を逆向きに走っています。ある地点を列車の先頭が通過してから最後尾が通過するまでの時間はAが15秒,Bが20秒です。また、AとBがすれ違うのに要する時間は18秒です。列車AとBの速さの比と長さの比をそれぞれ求めなさい。」
 
列車AはAの長さを15秒で進みます。
列車BはBの長さを20秒で進みます。
また、すれ違うときの距離はAとBの長さの合計で、これは18秒です。
 
すれ違うとき、列車AはAの長さを15秒進み、あと3秒残しています。
このとき、列車BはBの長さを18秒分進みますが、あと2秒足りません。
 
つまり列車Bの2秒の距離を列車Aが3秒進んで補っていることになります。
このことから、列車Aが3秒で進む距離は列車Bが2秒で進む距離と等しいことがわかります。
よって、列車Aと列車Bの速さの比は時間の逆比の2:3です。
 
長さの比は、Aは②の速さで15秒進んで○30、Bは③の速さで20秒進んで○60となり、
30:60=1:2です。
 
「等しいところに着目し、比を駆使して解く」のが算数独特の解法であることを紹介してきました。その使用例をもう少し見ていきます。
 
「りんごを4個とみかんを5個買うと、代金は1550円です。また、りんご3個とみかん4個の値段は同じです。りんごは1個何円ですか。」
 
方程式での解法では、りんごとみかんの1個の値段をx、yとおいて連立方程式が一般的です。
 
比を使っての解法は、
A×3=B×4が成り立つとき、A:B=4:3です。
つまり、りんご3個とみかん4個の値段は同じなのでりんご×3=みかん×4から、
りんご1個の値段は④、ミカン1個の値段は③とおけます。
(このことは「全体の金額が同じなら1個の値段と個数の関係は逆比」と教わります)
 
りんご4個の値段は④×4=⑯、みかん5個の値段は③×5=⑮なので、16+15=31から、
○31は1550円です。(○は⑳までしか表記できないので○31としました)
①は(1550÷31=)50円にあたるので、りんごは1個(50×4=)200円です。
 
次のはどうでしょう。
 
「1個200円のケーキを何個か買うつもりでしたが、大安売今日は1個150円で売っていたので、同じ金額で予定より2個多く買うことができました。ケーキは何個買う予定でしたか。」
 
方程式の解法では、予定の個数をx個として、200x=150(x+2)です。
 
200×A=150×Bならば、A:B=3:4です。
予定では③個、実際は④個買いました。
④は③より2個多いので、①は2個にあたります。
よって、(2×3=)6個買う予定でした。
 
同様の解き方ができる速さの問題があります。次の問題は初めて習うとき(比を習う前)過不足算で教わるのが一般的です。
 
「太郎君が家から公園まで毎分80mの速さで歩いて行くと予定時刻より4分遅くつき、毎分120mの速さで走って行くと予定時刻より8分早く着きます。家から公園まで何mありますか。」
 
方程式の解法では、道のりをxmとするか、歩いて行く時間をx分として解きます。
 
算数で比を使った解法は
毎分80mで行っても毎分120mで行っても家から公園までの道のりは一定です。
道のりが等しいとき、速さと時間は逆比の関係になります。
毎分80mと毎分120mの比は2:3なので、これにかかる時間の比は3:2です。
毎分80mで行ったときと毎分120mで行ったときの時間を③、②とすると、この差が(4+8=)12分なので、①は12分です。
よって、毎分80mでは(③=)36分かかっているので(80×36=)2880mです。
 
折角なので、次回、もう少し比を使って解く速さの問題を見ていきましょう。

申し訳ございません。

新著「難関中学に合格する図脳トレーニング」に間違いがありました。
ご購入いただいた皆様、ご迷惑をおかけします。
 
問題30の図(67ページの下の図)に間違いがありました。
読者様並びに関係者の方々にご迷惑をおかけしたこと、この場を借りて深くお詫びし、以下のように訂正させていただきます。