「元気・・・・ない・・ですね」


「えっ、そう?」


少し塞ぎ込んでしまった私を、リョータ君が心配そうにルームミラーを覗き込んでいる。


やはりリョータ君に気を遣わないで!と、お願いする事は無理なことなのだろうか。


私は思わずため息交じりにふぅっと息を吐いた。


するとリョータ君が、


「何かあったらいつでも俺に言ってください。俺、頼りにならないかもしれませんが、これでも奥様のことをお守りするのが任務なんですから」


と、訴える真剣な眼差しがミラー越しに見えた。


・・・・・・リョータ君。


そんなにまで私のことを心配してくれるなんて。


急に私の暗かった心に、パッと明かりが灯った気がして、ポッと温かい気持ちになった。

  


「ありがとうリョータ君。ごめんね心配かけて」


リョータ君の優しさ触れ、私の心が少しずつ満たされていく。


心なしかリョータ君がいつもより、たくさん笑顔を向けてくれている気がする。


これって、彼なりの気遣いなの?


眩しいくらいのリョータ君の笑顔に、なぜか私まで笑顔になっていた。


本当に不思議。


けど、嬉しい。



「そうだ。今からどっかへ寄って行きませんか?」


不意にリョータ君の口から思いがけない言葉が飛び出した。


以前の私だったらすぐお断りしていたはず。


でも今の私の心には、この言葉がとても新鮮に響いた。


寄り道か~。


そういえば最近どこにも出掛けてないかも。


丁度いい気分転換になるし、たまに羽を伸ばすくらいいいわよね。


どうせ怜さんは今夜も仕事でいないし、咎められることはなさそう。


一人でいるより誰かといる方が絶対に楽しいもの。


私の中で何かが弾け、私は迷わずリョータ君の誘いに、うんと頷いた。