柔軟剤の匂いに、こんなに気持ちを揺さぶられるとは思っていませんでした。

義父の洗濯物の柔軟剤の匂いが、ずっと苦手でした。

その柔軟剤は、亡くなった義母が選んでいたもの。雨の日になると、ドア越しに香ってきて、レッスン室にいてもふわっと入ってくる。

ただの匂いなのに、なぜか気持ちがざわざわして、ひどい時には、殺意に近い感情さえ湧くこともありました。

自分でも驚くくらいです。

でも、義母が亡くなってすぐに柔軟剤を変えるのは、土日に介護を手伝ってくれている義妹に悪い気がして、そのままにしていました。

今思えば、誰に頼まれたわけでもない、私の中の変な気遣いだったのかもしれません。

ある日、思い切って柔軟剤を変えました。

たったそれだけのことなのに、家の空気が少し変わりました。

匂いが変わると、気持ちも少しだけ楽になる。

介護をしていると、大きなことは変えられなくても、こんな小さなことで救われることがあるんだなと思いました。

我慢していたのは、匂いではなく、自分の気持ちだったのかもしれません。