異世界連合艦隊

異世界連合艦隊

にじファンのサービス終了を受けまして、そちらにて投稿していました拙作をこちらに移設させていただきます。

ゼロ魔二次創作です。

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 西暦1944年(昭和19年)6月16日。
 帝国と連合国とが開戦してより早二年半が経過。
 当初は快進撃の連続だった戦況もいまや帝国に利せず、事ここに至って皇軍は転進。マリアナ、パラオ、西部ニューギニアなどをつなぐ“絶対国防圏”を制定し不敗の構えを取った。

 小澤治三郎 おざわじざぶろう海軍中将が統率する、9隻の空母と5隻の戦艦、400を超える艦載機を中核とする連合艦隊 は、とうとうマリアナ諸島にまで迫ったアメリカ艦隊の迎撃作戦“あ号作戦”発令に従い同海域に進出しようとしていた。

 しかしこの日はあいにくの悪天候であり、海は大しけ、台風のごとき猛烈な風雨にさらされ、小澤中将の座乗する旗艦である空母、大鳳たいほうも大きく揺られていた。
基準排水量3万トン近い大鳳でこれなのだから、小型の物となれば1千トン弱しかない駆逐艦に至ってはたまったものではないだろう。

 その大鳳で、小澤と参謀長の古村啓蔵こむらけいぞう少将以下参謀たちが作戦の話をしていた。

「参謀長。この戦い、何としても勝たねばならんな」
「そうですな。もし我らが敗れ、マリアナを失えばがアメリカに勝利する可能性は限り無く低くなりましょう」

 5月20日にあ号作戦が発令され、同日に小澤らは指揮下の将兵らに対し以下の訓示を行っている。

『1。今次の艦隊決戦に当たっては、我が方の損害を省みず、戦闘を続行する。
2。大局上必要と認めた時は、一部の部隊の犠牲としこれを死地に投じても、作戦を強行する。
3。旗艦の事故、その他通信連絡思わしからざるときは、各級司令官は宜しく独断専行すべきである
4。もし、今次の決戦でその目的を達成出来なければ、たとえ水上艦艇が残ったにしても、その存在の意義はない』

「……どうせあの米軍の事だ。こちらの気が遠くなるような大軍を用意しとるだろうな」
「しかしこちらも、本日渾作戦参加部隊と合流しました。文字通りの連合艦隊の全戦力を投入した“決戦”なのです。それに角田中将の基地航空隊もありますし、戦う前からそこまで悲観することもありますまい」

 渾作戦とは、5月27日に発令されたビアク島の救援作戦の事だが、マリアナ方面の防衛を優先する決定により、ほぼ全部隊が小澤のもとに集っていた。

「まあ、気休めにはなろう。まずは敵空母を叩く。話はそれからだ」
「……武運を祈りましょう」

 小澤と古村の会話がそこで途絶えたちょうどその時、一人水兵が艦橋に駆け込んで来た。

「天候が回復しました!」

 言われて、小澤達も外を見た。あれほど荒れ狂っていた海が嘘のように穏やかになっている。


「おや、いつの間にか嵐は治まっておったようだ」
「長官、索敵隊を出しましょう。何としても先に奴等を見付けなければ」
「うむ、出撃を許可する」


 第一航空戦隊所属の空母翔鶴から発進した一機の艦上攻撃機天山が索敵で艦隊の前方約500キロまで進出していた。
 小林大尉を機長とする天山は高度4000メートルほどを飛行していたが、 何気無く雲の近くを飛んでいた彼はそこであり得ない光景を目にした。

「なんだこれは……空に大地が浮かんでやがる!?」

 彼は開いたままの口を塞ぐことも忘れてしばらくそれを茫然と眺めていたが、急いで引き返しつつ母艦に報告した。


 報告を受けた艦隊司令部はこれを何かの冗談だと思った。
 しかし、その後向かわせた多数の機がまったく同じ報告を送って来たので真剣に検討せざるを得なくなった。



「航空機らしきもの接近!」
「何だと、何機だ!?」

艦隊前衛の駆逐艦岸波の見張り員が接近するひとつの飛行物体を見付けた。

「……違う、あれは航空機じゃない、竜です!」
「竜だと?貴様、寝言は寝て言え!!」

 そう言い、反射的に鉄拳を握りかけた下士官も接近してくる“そいつ”を見て考えを改めた。

「そんな馬鹿な……」

 彼らが見たのはまるで想像の世界から飛び出したかのような見事な西洋竜と、その背にまたがる鎧騎士の姿だった。