原題「我的阿勒泰」(私のアルタイ)45分×8話(2話まで無料)Iqiyi。中国新疆在住の作家李娟(リージュエン)の随筆が原案のドラマ。アルタイの大自然、中国少数民族の文化と生活、マイノリティとして生きる漢民族母娘の姿を美しく描いたドラマ。無料分だけでもおすすめ。

舞台は中国新疆の最北にあるイリ=カザフ自治州アルタイ地区。主人公は小説家を目指す漢民族の女性。都会の仕事を辞め、母と祖母と一緒に中国少数民族の夏遊牧についていき、人々と交流する。その中で少数民族の青年と思いを通わすようになるが……。

アルタイの風景は、乾燥した平地、雪が残る高山に囲まれた草原や砂漠で、どれも私のイメージする中国でも新疆でもないとても不思議な風景だった(wikiによると「河川や湖沼が多く新疆では別天地をなす」とあった)。
この地では少数民族がマジョリティで漢民族はマイノリティである。カザフ族とモンゴル族が出てきて、双方の文化が丁寧に描写され、非常に勉強になった。結婚式のお祭り騒ぎや乗馬競技は見ごたえがあった。独自の文化を守る年長者と現代中国を知る若い世代が描かれ、いろいろ考えさせられた。

その他、主人公の母の強く脆い姿が印象的だった。夫を失くし、認知症を患う自分の母の面倒を見ながらマジョリティの少数民族を相手に商売をして逞しく生きる母。そんな母もある男性と出会い「女」になる。「女」になったときの母の演技は静かなのにゾッとするくらい凄惨だった。この男性のせいで全てが壊れて最終話に繋がっていく。全てが壊れてからラスト前までの展開が辛かった。でも、最後は主人公の笑顔で終わって本当に救われた。作者が監修しているのでストーリー展開がとても上手かった。

母を演じる马伊琍、ドラマでは日焼けした生活に疲れた中年女性だったがネットで調べるとめちゃくちゃ美人で衝撃。主人公役の周依然は透明感があり、あどけないけど内に秘めた意思の強さも感じさせる不思議な雰囲気があった。カザフ族青年役の于适は若いのに人生を達観したかのような落ち着いた目がとても印象的な役者だった。

原作者李娟の本もとても良くておすすめ。
翻訳には「アルタイの片隅で」「冬牧場」がある。前者はアルタイで母と小売店を営んだ日々、後者は本の取材でカザフ族の冬遊牧についていった一冬を書いたエッセイだ。作者が女性なので狩りとか物騒な話はなく、日々の暮らしを素朴に生き生きと書いている。その暮らしのなかで彼女が気付いたことにはハッとさせられることが多かった。お母さんのエピソードもありどれも豪快で面白い。
今は「遥远的向日葵地」(直訳は「遥か遠くのヒマワリ畑」日本語版なし)の中国語書籍を買って読んでいる。これに祖母の話もある。