* 8時20分(高橋 ヒナ)
「でもでも、こんな偶然ってあるー?
普通ありえないよ、こんなこと!!」
私はまさかの奇跡に驚いていた。
そう、あの幼馴染3人組が皆同じクラスだったのである。
幼稚園から中学校までずっと同じ学校だったのだが、
生徒の数が多かったため8クラスもあり、
私達が一緒のクラスになることは無かったのだ。
それは高校に入学しても同じ事で、
前日の入学パーティーの時に
「今度の高校も8クラスあるんだってー!
これでまた3人一緒のクラスってのは・・・無いよねぇ。」
と皆でがっかりしていた、
まさにその矢先だったのである。
「何かこれって神様のいたずらって感じじゃない?
これからすっごく不思議な事が起こったりして!?」
美帆がきらきらした目で、身振り手振りを交えながら、
これから起こる不思議な体験について、
あれでもない、これでもないと妄想して話している。
「あーあ・・・駄目だこりゃ。
こうなった美帆は誰も止めらんない。」
呆れた顔でため息をつき、ちらりともう一度美帆を見て、
首を横に振ると、美雪は私の方に向き直った。
「ねぇ、ヒナ。うち、ちょっと亜里沙ん所行って来るよ。
6組って私達の高校の子、亜里沙だけで、多分寂しがってるだろうからさ!!」
「あ・・・分かった!私は自分の席に座ってるよ。
忘れ物あるかもしれないから、確認したいし。」
私は顔の前で両手をパンっと合わせて、ゴメンと謝る。
「そっかそっか!分かった。じゃあうち、ちょっといってくるから待っててねぇ。」
美雪は手をひらひら振りながら風のように教室を出て、
廊下を走って行ってしまった。
いつまでも妄想を繰り広げている美帆を横目に、
私は黒板で自分の席を確認した後、
鞄を机の上に置き、席についた。
一息ついて、先程ポケットにつめこんだ一枚の紙をそっと取り出す。
校庭で美帆と喜んだ時に握り締めてくしゃくしゃになってしまった、
クラス発表の紙である。
あの後に鞄に入れるのが面倒で、
スカートのポケットに入れたため丸まってしまい、
はたから見るとただの紙くずに見える。
そんな紙くずを手にとり、誰にも見られていない事を確認すると、
私は急いでしわを伸ばし始めた。
そしてもう一度、これから1年間共に過ごす仲間の名前を見直す。
美帆に言われて自分のクラスを探している時に、
ある名前が目にとまったからである。
―さっき確か・・・あの人の名前が・・・―
震える指で名前の欄を上からなぞっていく。
―青木・・・
飯島・・・
佐々木・・・
篠田・・・
立川・・・
た・・・立川・・・ッッ!!―
「あ、あったぁっ!!!!」
―ガタンッ!!―
あまりの嬉しさに声を出し、立ち上がってしまった私を見て、
クラスメイト達がくすくす笑う。
私は顔を赤くし、うつむきながらそっと座った。
そしてもう一度あの名前を探す。
―出席番号17番 立川 陸-
あった・・・
あったあったあったあった・・・あったぁっ!!!!!
自然と笑いがこみ上げてきてしまうのをぐっとこらえ、目を閉じて、
私は中学2年生の、あの時の事を思い出した。