SideJ
怖い。
なんか僕の体が怖いもん。
「潤くん、起きよう?」
「ん、しょお先生?」
「うん、良かった。 潤くんの体は完全ではないけど女の子になり始めているのは分かっているよね?」
だから目覚めたくなかった。
だって、僕は男だと思っていても体は女の子なんでしょ?
「元から潤くんの体は女の子なんだけど胸が大きいことは無かったからビックリしてるんだよね? でも、そういう人いるから」
「え?」
僕は元々男じゃなくて女ってこと?
「性同一性障害。 今まではズボンで済んだし。個室に入っていたから何となく男の子としている気分だったと思うけど中学校は制服だもんね? 嫌でも分かっちゃったって感じでしょ?」
うん、なんでなんだろうって。
「そういう人いるんだよ? 逆の人だっている。女だと思ってたのに体は男っていう人。うん。潤くんが無理に女と思わなくてもいいよ? 」
いいの?
完全に女だと分かったのに?
「ほんとに?」
「うん、俺は潤くんを女として扱うこともあるし男として扱うと思う。 今、潤くんと呼んでいる以上は男として。 でも、それはここやお家でしか無理だよね? 学校や公共の場だったら?」
「ちょっと難しい。 変な人だと思われるよね?」
「そうだね。 でも。それを覚悟してるなら貫くのも1つだと思う」
「男としてってこと?」
「そういうこと。 1人も理解してくれる人がいないなんてことは絶対にないから。 1人かもしれないし2人かもしれないけど味方はいるはず」
そっか。 理解してくれる人いるんだ。
「学校は様子見ようか。 退院はしてもいいけどお兄さん達には事情は説明してるけど嫌だったりする?」
そう聞かれてさとにぃとカズくんとまーを思い出した。
「分かってくれるのかな・・・」
すると先生は
「んー、潤くんを見てもいつもの潤くんだと思ってくれるはずだよ? 」
「ほんと?」
「じゃ、心配ならそばにいてあげる」
先生・・・
優しいな。
「ありがと」
「ふふっ、潤くんは泣き虫さんなのかな? 病院嫌いな潤くんなのは知ってたけど」
むぅ、僕泣き虫じゃないもん。
そう思っていると
「可愛い。 表情で分かっちゃうもんな。 もうすぐ来るはずだ」
ほんとだ。
「潤、何がいいか分からなかったからフルーツ盛りにしちゃった」
ふふっ、ほんとだ。
フルーツが沢山。
「ありがとう」
「少し食べますか?」
「うん」
「元気そうでよかった」
元気だよ?
僕は人の手を使わないで食べれるバナナを食べた。
「潤、体調は?」
「今は平気。 心配させてごめんなさい」
謝ると
「んふふ、大丈夫。 それに見た目が変わっても潤の良さはどこも変わってない」
そう言って僕の髪の毛を撫でた。
「元々可愛らしいのでそれほど変わったという感じはないですよ」
「そうそう。 どう見ても話していても潤ちゃんって感じ」
そう?
嬉しいな。
「ん、じゃ、俺は部屋に戻るよ。潤くん、また後でね? 」
僕、先生と離れたくない。
思わず先生の白衣を掴んでしまった。
すると先生はクスッと笑って
「進歩したみたいだね? まぁ、俺は他の医者と違って心のケアを中心とした治療だからね」
だからなのかな。
先生なら怖くても大丈夫って気持ちになる。
「潤ちゃん、病室の中だけじゃなくてちょっと屋上とか気分転換した方がいいよ」
「そうですね。 今の時期なら紅葉が綺麗ですから」
そうだね。綺麗だよね。
「じゃ、俺たちは帰るよ。 明日も来るよ」
「うん」
さとにぃとまーとカズくんに嫌われなくて良かった。
「明後日の退院だな」
病院を出れば僕は外に出る。
僕は今日から女の子して生活する。
赤ちゃんの時は男の子って言われてたから間違ってはないよね?
「ん? 聞きたいことでも?」
「僕はいつから女の子の体になったの?」
そう聞けば
「んー。俺は潤くんの担当は潤くんが倒れた日からだからね。 でも内科の父さんは小学校の時に女の子になるんじゃないかと思ってたみたい」
「じゃ、小学生から女の子なの?」
「んー、小学校の高学年から少しずつ女の子の体に変化していくようになってきていたみたいだ。その病気の名は分からないけどある説によると潤くんの体は生まれ変わって強くなるらしい」
強くなるの?
僕、ずっと弱くて体育出来なくて。
だから嬉しい。
「ほんとに?」
「うん、潤くんは少しずつ強くなっていく。 全くできない体育は走る運動はまだ出来ないけどバレーボールは大丈夫。 それから器械体操も。自分のペースで出来る運動なら基本大丈夫だけどランニングはまだ無理。それとプールも無理。 何故ならまだ潤くんは戸惑っているよね?」
「うん、何で僕は女の子なのか分からないもん」
「だよね。 急に変化する体の病気は分からないけど見た目は女、心は男は性同一性障害。 逆のパターンも。 ちょっと違うかもだけど完全に女の子になっても潤くんが男だと思ってたらそれは間違ってない。 けど、決して悪いことではないのも分かって欲しい」
先生、僕、よく分からないけど。
僕、女の子として生きていくけど生まれ変わることって何度もあったりするのかな。
だって、生まれ変われるほど強くなれるんでしょ?
僕、強くなりたい。
普通に体育が出来るぐらいの体でいたいよ。