SideJ

僕はこの着物が重たくて困る。

何故なんだ? 僕は男じゃないの?

僕は女の子なの?

この十二単はなんと言っても重たく、僕には似合わないのだ。

僕は自分が何者かは分からない。

潤という名前と、僕は姫だと呼ばれることぐらいしか分からない。

いつ、生まれたのか、いつからここにいるのか

僕のお母様とお父様は?

僕よりも格下の人ならいくらでもいる。

僕よりも綺麗じゃない人だらけ。

僕はなんで生きているのか分からない。

なのに僕に最近婚約者候補が集まってくる。
僕のお世話係が集めてくるんだ、よく分からない、好きというものは何?

 僕には分からないのだ、好きだと言われても答えられない、何の緊張感もなく嫌な感情しかない。

「集めてきました」

「もう、要らない」

「姫・・・、そんなこと言わないでください、貴方はもうすぐでご結婚されないと困ります」

「どうして?」

そう聞けば

「貴方に悪い噂が来たら困ります」

むぅー、そんなの関係ないもん。

「分かったよ、通せ」

「承知しました」

するとまぁまぁいい男が来た。

けどな・・・その身長・・・小さいのだ。

僕よりも小さい人はお断りなのだ。

「カズ」

「承知しました、では」

カズはその男を帰らせた。

「私の方がカッコイイお方ですよ!」

「雅・・・」

僕のお世話係でもこの2人には何故か僕の言いぶんを聞いてくれない時が多い。

「分かったよ、連れてきな」

そう言うと、連れてきたのは今までに見たこと無かったカッコイイ人だ。 

「どうでしょうか・・・」

「雅、話してみたいのだ、少し下がっててくれるか?」

「はい、何かありましたらお呼びください」

下がった・・・

2人きりになると緊張する。

「雅がご迷惑でもかけましたか?」

基本、2人がいい人たちをその人には伝えずお金をあげて連れていくのだから。

「少しはですけど・・・、姫様に会えてよかったと思っております」

「聞くがそなたは私のことが好きなのか?」

そう聞けば少し頬を染めて

「好きです、真っ直ぐな姫様の瞳が特に好きです」

僕の瞳? 

そんな人は今までいなかった。

なら、僕はこの人を信じ、この人を好きになり、さらけ出しても良いのだろうか。

「名前はなんて申すの?」

「翔です、よろしければ姫様のお名前を伺いたいです」

そんなことも言ってくる人いない。

「潤です、しょお、好きになってもいいの?」

僕が名前を呼ぶと嬉しそうに笑った。

「潤、私を好きになって? 信じてみてくれないか?」

僕は頷くと

「ありがとう、嬉しいよ」

そう言って笑った顔が僕にはドキドキした。

「しょお・・・」

「じゅん・・・好きだよ、大好きだよ」

「しょお・・・大好きだよ」

「結婚したいか?」

急に結婚!?
でも・・・僕はしょおが好きだから

「うん」

「なら、早速手配した方が良さそうたな」

「そうだね」

「では、呼んでもらえるか?」

「雅~、カズ~、出番だ」

「姫様、そちらの方と?」

「うん、そうなんだよ」

そう言えばカズは少しビックリしていた。

「おめでとうございます、こちらに書いて頂けたら後は責任持ちますので」

「ありがとう」

僕は結婚するんだ・・・

そう思うと不思議と温かい気持ちにさせられた。

それから僕たちは近いうちに披露宴を行い、僕たちは祝福された。

そして、僕は男だった、けど、姫の跡取りとなる女の子がいなかった。

だから僕なのだと。

それはしょおも聞いていてしょおも納得していた。

幸せの中、しょおが

「ごめんな、急に仕事が遠くになってしまった」

しょおは1番偉い貴族の息子さんだとのこと。

「そんな・・・」

離れちゃうの? 寂しいよ・・・

「絶対に帰ってくるから、なるべく早く終わらせるから」

「わかった、行ってらっしゃい」

僕は1人で待ってる。

僕はずっと待ってるよ。


ーーー

「じゅん・・・」

ん?

目覚めると・・・

あれ?

ここは?

「大丈夫? 夢見てた?」

「そうみたい・・・」

しょおくんは僕をギューッと抱きしめ

「大丈夫だよ、潤が好きだから」

見てた夢・・・それは文化祭でやった演劇だった。

僕としょおくんは同じクラスで、好きだったけど男じゃん? 告ることは出来なくて学級委員でカッコよくて憧れて、女子にも男子からにも好かれていた。

しょおくんは違うグループで、そっちのグループといる時が多いからあんまり話すことは無かった。

僕はカズとまーと一緒にいたんだ。

文化祭で何やるか提案した時に意見が多かったのが演劇だった。

何故か、僕は姫役にされた。
その恋人役がしょおくんと。

するとカズとまー以外キャーキャー言い始めたのは今でも覚えている。

で、初めて話してみてやっぱり好きだってこととドキドキが聞こえちゃうんじゃないかと不安だった。

終わればしょおくんとはこんな近くでいられるわけないと思った。

けど、文化祭が終わった帰りに話があるって言ったから一緒に帰ることにした。

帰りがいつもより遅くて公園には誰もいなかった。

そこでしょおくんが僕のことをずっと好きだったってことを知り、恋人同士となった。

「ふふっ、僕も大好きだよ」

だからね、こうしてしょおくんが抱きしめてくると安心する、懐かしい夢を見たんだって思える。

「キスしていい?」

「うん」

好きだよ、キスするのもその先も。

「まだ夜中だ、寝よう?」

「うん、しょおくん、ギューってしててね?」

「もちろん、ギューってしてるけど」

「ふふふっ、してないと怒るからね?」

「それは怖いな~、ちゃんとしてるからな?」

ふふっ、まだ夜中なのに僕は朝みたいに感じる。

「しょおくん、好きだからね?」

「どうした?」

「あのね、文化祭の夢見てた」

そう言うとしょおくんは

「そっか、3年間同じクラスだったな」

「だね?」

「入学して、何日かして名前覚えた時からかな?好きになったのは」

「ふふっ、僕も同じぐらいだよ」

そう言うと嬉しそうに

「そっか、嬉しいな、同じぐらいに好きだったか、なら、もう少し早くいえば良かった」

「ふふっ、僕もそう思っちゃった」

そう言えば

「でも、やっぱりやったからこそだよな」

「そうだね」

「やっぱりさ、潤はさ、皆からも可愛いと思われてたんだよな・・・」

複雑そうな表情をしていた。

「だから僕は姫役なの?」

「え? 分かってなかったのか?

「うん」

「潤は女装しても似合うだろって言ってたからなったんだよ」

そんな話してたっけ?

「しょおくん、僕は幸せだよ?」

そう言えば嬉しそうに笑って

「俺もだよ、潤が傍にいてくれたらずっと幸せなんだ」

この幸せを大切に、喧嘩することはたまにあってもすぐ仲直りになるのは出会いが運命だったからだろうか。