先生はゆっくりと話し始めた。

「立てるようになるにはリハビリ毎日することサボってない?」

「毎日じゃなくていいって言われたけど」

「潤くんは二度と立てないと思ってる?」

立ちたいけど、もう立てないとも思ってた。

「立てるようになるまで一緒に頑張ろう?」

「え?」

「私の家は実は潤くんのお家のお隣なんだよ、ここはお母さんの診療所なんだよ」

先生のお家って大きなお家過ぎない?
隣でしょ? めっちゃ大きなお家で分かんなかったな。

「だから、お友達にならない?」

お友達? 先生と?

「お友達?」

「ダメかな?」

僕にお友達なんていなかった。

「なってくれるの?」

そう聞けば

「もちろん、よろしくね?」

先生が嬉しそうだと僕も嬉しくなる。

それから向かったのは先生のお家だった。

「お邪魔します・・・」

「どうぞ、早速だけど練習しよっか?」

「うん」

ここには左右に手すりが沢山あった。

「少し前まで父さんは車椅子生活してたからこのままになってるの、まず、立てる?」

ゆっくりと立ち上がろうとしてもすぐ椅子に座っちゃう。

「俺の手を掴んで?」

「うん」

もう一度立ち上がろうとして僕がまた座っちゃう前に先生が僕の手を引っ張った。

あ・・・抱きしめられた状態に。

「手すり掴める?」

「うん」

「ゆっくりでいいから俺がいる所まで歩いてみて?」

手すりが無くなるところに先生がいる。
そこまで歩けるかな?
片方の手で手すりに掴まりながら歩き始める。

あと、もう少し・・・そんな所で僕は意識が無くなりそうだった。

「大丈夫?」

そう言われてハッとした。 僕は先生の所まで歩きたいの。

そう思いながら、手すりが無くなってゆっくりとしょおくんに抱えられた。

「よくできたね? 今日はおしまい、明日もまたやるよ?」

「うん」

「よし、じゃあ送るから」

「隣なのに?」

「心配だもん」

クスッ、先生なんか可愛い。

「じゃあ、お願いします」

「了解」

送って貰えたのはいいんだけど・・・お母さんは

「あら、ちょうどいい人いたわ、ちょっと夫と出かけてくるから」

「2人で?」

「んー、まぁ、もしかしたらもう1人かも?」

「僕は1人になると?」

「そういうことなの、だから先生が良ければ」

先生はクスッと笑って

「分かりました、私のお家に泊めることになりますが・・・」

「ありがとうございます、これ、潤の服です」

「分かりました」

先生は何故か嬉しそうだった。  

どうして嬉しいの? 
僕には分からなかった。