三寒四温

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ペルラ・サングレは退屈していた。


サングレ一族は、本家当主を頂点とし、数多の分家を抱える名家である。
西の新大陸を拠点に、魔法・科学・歴史を究め、絶大な権力と資産を欲しいままにしていた。
サングレの血をひく者は、皆長命で美しく、強い魔力を持つ。
体内の魔力は強ければ強い程老化を防ぐため、一部のサングレの者は不老とすら言えた。
彼らサングレ家に共通するのは、金髪と紅い瞳。
濃淡の差はあれど、一族の者は純血ならば必ずこれらの色を身に帯びている。

そして現在より13年前、歴代本家当主の中でも一際美しく、聡明で強力な男が現れた。
彼こそがペルラ・サングレ。
軽くうねる豪奢な金髪は、まるで純金で縒った糸のよう…
鮮烈な血の色の瞳はどこまでも深く、向こうが透ける程の白皙によく映えた。
右眼の下に二つ、左眼の下に一つ、星のように散らばった黒子さえ、アンバランスな色気を彼に与えている。
誰もに賞賛され、敬愛され、畏怖されたペルラは、もとより強大であったサングレ一族の影響力を極限まで高めた。
彼が当主を継いで以来、これまで交流のなかった東の旧大陸の研究も進み、サングレ家は西だけでなく、東をもほぼ手中に収めたのである。

彼と彼の一族が支配する西の新大陸には、華やかな貴族文化が栄え、かつてよりこの地を治めていた王家にはサングレの影響が強く働いている。
既に傀儡となった王家の姫との婚姻も決まっていた。
このように、この世の誰より幸運に恵まれたペルラはしかし、どうしようもなく退屈していた。
異常とも言えるその才がゆえに。

そんな時だった。
彼が、禁忌ともいえる"双子"についての文献を発見したのは…