新型出生前診断に対して、妊婦さんを診察している産婦人科の先生たちの中には、
「産む決断をした時に、ご夫婦にこのように育てていけば良いのですよ。
という1つのモデルを提案することが出来ない。
これが悔しいことです。」
と語っています。
そんな状態で、新型出生前診断を進めているのはどうなのか?
という考えもありますが、医師としては患者さんが望む検査や治療を提供する義務があります。
昔と違い、医師が上、患者が下という考えはなくなり、
医師と患者が互いに歩み寄り、選択をしていく形になっています。
セカンドオピニオンやインフォームドコンセントという言葉も、患者が主体となって医療を選択していくわけです。
やはり、こうした時代の変化に追いついていない社会が問題なのであって、
そうした社会が原因で、医師などが妊婦さんに提案をすることができない。
これが、妊婦さん、夫婦の精神的な支えを失うキッカケになるのだと思います。
新型出生前診断を受ける方の中には、検査についてよく知っている方も居ますし、
反対に全く知らない方も居ます。
提供する相手が異なれば、それ相応の対応が必要で、やはり個人に合った情報提供が為されなければならないと思うのです。
認定施設において、遺伝カウンセリングを受けることはとても重要ですが、
夫婦や妊婦さんのバックグラウンドを理解した上での説明はなされていません。
検査の説明であったり、陽性だった場合でも産む選択をする際の社会的サポートについての説明です。
受けた方が、本当に必要な情報は、
「こうやって育てている方がいますよ。」
であるとか、
「陽性で中絶された方は、こんな感想を持っていますよ。」
といった、モデルを提案しなければならないと思うのです。
ですから、そうした情報提供が為されていない現状で、新型出生前診断の扱い方は、
陽性だったら中絶。
という考えに至りやすいのでは無いでしょうか?
もちろん、そうした考えは、
1日2日考えて出された答えではありません。
検査を受ける前から、受けた後、結果が来た後、中絶期限まで
考えて、考えて、それでも考えて答えを出しています。
こうした状況から考えても、
中絶に対する検査や妊婦さんへの批判を強めることより、
学会に丸投げで、何も手を付けない国に対して私たちは議論を交わす必要があるのではないでしょうか?