僕の母親は随分と長く着付けの仕事をやっていた(師範だと言ってたような)のですが、たまに聞かせてくれた着付けの話が、結構印象的でした。
結婚式の仕事では、花嫁ではなくいつも親戚の着付けを担当したそうです。
腕が良いのならなぜ花嫁の着付けをやらないのかなぁと、素朴に疑問を感じたので、ある時聞いてみたのですが・・・
曰く「お客さんがどんな年齢・体型であっても着付けできる人が本物の着付け師だから」。
随分遠回しな答えだなぁとは思いますが・・・
花嫁は一人ですが、親戚の参列者は多数です。年齢や体型もまちまちです。当然ですが全てぶっつけ本番で対応しなくてはならず、いろんな技(?)を駆使して、大勢いる親戚の着付けをこなしていく、ていう感じですかね。
つまり実際の現場では、一人の花嫁の華やかな着付けに比べて、大勢の親戚の地味な着付けの方が、技術的にも時間的にも遥かに難易度が高いということなのでしょう。
・・・
今思うと、これってすごく示唆に富んだ話だよなぁ、と、ちょっと感心しています。(笑)
写真で言えば、こんな感じでしょうか。
綺麗なメイクをし、綺麗な衣装を着た綺麗な被写体(モデルさん)にカメラを向けてシャッターを切れば、ぶっちゃけちょっとコツさえ掴めば綺麗な写真が撮れてしまいます。
それに対して、被写体の性別・年齢・体型・肌質に関係なく、誰であっても「美しい写真」を撮れ、(お客さんである)被写体に感謝される人が、「本物のカメラマン」なんだろうな、と。
ブツ撮りでも、綺麗な花を綺麗に撮るよりも、地味なブツを印象的に撮る方が難易度が高いんだろうな、と。
僕もそんな写真を撮れるといいなぁ、と、ぼんやり考えています。
Canon EOS 50D 17-70mm F2.8-4