同窓会に来た目的は昔イジメた子に詫びを入れるためなのだが、いざ本人を目の前にすると最初の一歩が踏み出せない。
同じ思いなのか、タカポンは渋面でグラスのビールを飲み干して呟いた。
「俺さぁ、彼女に謝ろうと思ってたんだけど…いざ、本人目の前にすると怯んじゃってさぁ」
「なんだ、お前もか」
俺が言うと、途端にタカポンの顔がパッと明るくなった。
「何? 『お前も』ってことは…?」
「俺もだよ」
俺はタカポンにこれまでのことを話した。
俺の話を聞き終えたタカポンは「…あー、やっぱり? 子供に示しつかないよなぁ」と溜め息混じりに呟いた。
タカポンも結婚して子を持つ父となっていた。
「それにさぁ、『親の因果が子に報う』っつうじゃん? なんか俺がイジメっ子のまんまだと、娘がイジメられっ子になりそうでさぁ…怖くない?」
「…いや、どうかな?」
俺は息子の顔を思い浮かべて言った。
『うちの息子は俺と同じく立派なイジメっ子になったよ』とはさすがに言えず、ビールと一緒に言葉を飲み込んだ。
続く