日本経済新聞

2020年4月11日 4:09 (2020年4月11日 12:04 更新)

【シリコンバレー=白石武志】米アップルとグーグルは10日、スマートフォンを使って新型コロナウイルスの濃厚接触の可能性を検出・通知する技術を共同開発すると発表した。5月に第1弾となる機能を各国の公衆衛生当局向けに提供を始める。日本でも展開する。スマホを使って感染経路を追跡する技術はすでに中国などで導入されているが、プライバシー上の課題もあり、対策が急務になっている。

両社が開発する新技術は、スマホの近距離無線通信規格「ブルートゥース」を活用。周辺のスマホを一定の間隔で検知し、互いの識別情報を端末内に保存する。新型コロナの感染者が見つかった場合、本人の同意を得られれば、過去14日間に蓄積した近隣のスマホの識別情報がクラウド上のシステムに送られ、濃厚接触の可能性がある人々に通知が届く仕組みだ。

まず5月までに世界各国の公衆衛生当局が開発するアプリ向けに、アップルの「iOS」とグーグルの「アンドロイド」の2つの基本ソフト(OS)間で相互運用が可能な検出・追跡機能の提供を始める。さらに数カ月をかけて、両社のOSそのものに検出・追跡機能を組み込む。

両社は「プライバシーや透明性、同意は何よりも重要だ」としている。新技術は利用者による事前の同意を前提にデータを収集する。全地球測位システム(GPS)などの位置情報は収集せず、スマホの識別情報を匿名化した上で一定間隔で更新する。誰が新型コロナに感染したかはアップルやグーグルでも把握できないという。

中国やシンガポール、韓国では、スマホを使って国民の位置情報や体調などのデータを集めて感染拡大の防止に役立てている。感染経路の特定は容易になるが、国が国民を監視する手段を持つ恐れもある。米国の人権団体などからは懸念の声も上がっている。アップルとグーグルは第三者が仕組みを分析できるよう新技術の情報を公開するほか、開発にあたっては外部の意見を取り入れるとしている。