「ここに少ししかいなかった俺にも聞こえていた。あの沢山の悲鳴は見えない血潮だ。お前達が流させた血だ。お前達が金にかえた血だ。見えなかったというのなら、今この瞬間に見ろ。お前達が真実、何をしていたのかを」
目を逸らすことなど許さない。
見ろ、この血を。
感じろ、肉を貫いた手の重みを。
決して塞ぐな、この部屋に充満する錆びた鉄の臭いを。
「目に見える赤だけが血ではない。刺し、撃つばかりが殺しでもない」
咳と共にゴポリと赤が溢れる。降り注いだそれに手を真っ赤に染めながら、ヒバリは真っ直ぐに男を見た。
「ば……、ばけもの……」
男が無意識に震える唇で呟く。これほど血を流しながら、それでも立って真っ直ぐに見つめてくるその姿が恐ろしくてならない。男の呟きにヒバリの唇がニィっと笑みを浮かべた。
「化け物と呼ぶなら、お望み通り喰ってやろうか?」
血に塗れても美しい彼は、しかしだからこそ恐ろしい。ヒッと男の口から小さな悲鳴が零れた、その時だった。
「その必要はないよ。もう時間稼ぎは必要ないからね」
聞き覚えのある声が耳に響いた瞬間、ふわりと凪の身体が暖かな何かに包まれた。錆びた鉄の臭いに混じって届く、懐かしい香り。
「捕縛せよ」
その声を聞いた瞬間、凪はようやく足の痛みを知り、そして逃れるように意識を手放した。