「ヒバリ様、お久しゅうございます」
ボンヤリとしていたのだろうか、ツバキが声をかけてようやくヒバリは彼女に視線を向けた。そしてゆっくりと立ち上がる。
「失礼、少し考え事をしていたもので。お久しぶりですね、夫人」
ツバキの前に立ち、ロールを抱いたままヒバリは頭を垂れる。ツバキが慌てて顔を上げるよう促した。
「どうぞお顔を上げてください。おしかけたのは私達ですから」
その言葉にようやくヒバリが顔を上げる。それにホッとして、ツバキは隣にいるナイーマの背をそっと押した。
「ヒバリ様、娘のナイーマです」
促され、一歩前に出たナイーマは慣れたようにお辞儀をした。
「ナイーマと申します。ヒバリさま」
言葉の響きは少し幼いが、動きは完璧なそれにヒバリも頭を垂れて礼をした。
「お初にお目にかかります、ナイーマ王女」
凪の目には犬を抱いたままというところに少しの邪道さを感じるが、ナイーマは上手く挨拶ができたからか、それとも美しい青年が紳士のように挨拶を返してくれたからか上機嫌だ。そんな娘にツバキも微笑んでいる。