　前回のブログを書くにあたって『ディア・ハンター THE DEER HUNTER』を観ていたら主演のロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープが不倫の男女を演じた『恋におちて FALL IN LOVE』を観たくなってきました。すごいカップルです。なにせ二人でアカデミー賞を五つも取っているんですから（笑）。

＜あらすじ＞　※ネタバレ注意

　建築技師のフランク（ロバート・デ・ニーロ Robert De Niro 1943-）とグラフィックデザイナーのモリー（メリル・ストリープ Meryl Streep 1949-）。二人は、クリスマス・イブの夜にニューヨークの書店でそれぞれが買った本の入った紙袋を間違えて持って帰ってしまったことをきっかけに親しくなった。フランクには妻と５歳と６歳の男の子。モリーにも夫がいた。

　二人はニューヨークの郊外に住んでいて、中心部に出るのに同じ路線の電車を使っていた。電車の中やカフェでデートを重ねるうちに２人は互いへの思いを募らせていく。フランクはベッドの上でモリーを求めるが、彼女は涙ながらにそれを拒否する。

　モリーはこれ以上関係を続けるとお互いの家庭が崩壊してしまうのではないかと恐れ、父親が亡くなったこともあってフランクと会わないようにする。モリーを忘れるためにフランクも会社から打診のあったヒューストンへの転勤を受け入れ、最後にもう一度会っておきたいとモリーの家に電話する。

　最初は断るモリーだったが、フランクに熱意に負けて嵐の中、彼の家へと車を走らせる。そして遮断機が下りかかっている踏切に突っ込む直前に車を停車させ、電車が通過した後も車のエンジンはかからなかった。

　まためぐってきたクリスマス・イブの日。用事があってニューヨークにやって来たフランクは思い出の書店に立ち寄り、偶然、モリーと再会した。フランクはモリーとの、モリーはフランクとの交際が原因で家族と別居状態が続いていたが、二人はそのことには触れずに笑顔で別れた。しかし、フランクは自分の気持ちに忠実であろうと思い直し、電車に乗ってモリーを探す。ようやくモリーを見つけたフランクは彼女のもとに歩み寄り、二人は熱い抱擁を交わした。（Amazonプライム・ビデオで視聴）

ウール・グロスバード監督（Ulu Grosbard 1929-2013）

1984年のアメリカ映画

＜ロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープ＞

　これは本来は『ディア・ハンター』(1978)のブログで紹介すべきだったのですが、メリル・ストリープを『ディア・ハンター』のリンダ役に抜擢して本格的に映画デビューさせたのはロバート・デ・ニーロでした。当時、メリル・ストリープは舞台女優として活躍していて、その舞台を観たロバート・デ・ニーロが彼女を気に入って自分が主演する『ディア・ハンター』にキャスティングするように関係者に直談判したということです。ロバート・デ・ニーロは、メリル・ストリープのことを「自分と最も息の合う女優」と言っています。

　そのロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープですが、名優ということのほかに

共通点があります。次の二つの動画をご覧ください。

　そう、二人とも大のトランプ嫌いなんです。ロバート・デ・ニーロの動画は、２０１８年６月に行われたトニー賞の授賞式のものです。この賞は、ミュージカルの優秀作品や関係者に贈られるもので、この席でロバート・デ・ニーロは4文字言葉で当時のトランプ大統領をこき下ろしています。これに対してトランプ大統領は、ロバート・デ・ニーロが『レイジング・ブル RAGING BULL』(1980)のボクサー役でアカデミー主演男優賞を受賞したことを逆手にとって「映画の中でボクシング選手に殴られすぎた」とツイッターで応酬しています。

　もう一つ、メリル・ストリープの動画は２０１７年１月のゴールデン・グローブ賞の授賞式のもので、数日後に大統領に就任するトランプ氏の選挙戦での言動を３分４５秒あたりから批判しています。これに対してトランプ氏は「ハリウッドで最も過大評価されている女優の一人」とツイッターに書き込んでいます。

　今年も１１月に大統領選挙があり、トランプ前大統領が復権を目指して共和党から立候補します。ロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープはどう動くのか。二人から目が離せまん（笑）。

＜日本版「恋に落ちて」＞

　私と同世代の人の中には「恋におちて」と聞くと、小林明子さんの曲を思い出す人が多いのではないでしょうか。この曲は、１９８５年８月から１２月までＴＢＳ系で放送されたドラマ『金曜日の妻たちへⅢ・恋に落ちて』の主題歌として使われ大ヒットしました。

　かねてから、この曲やドラマのタイトルはロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープの映画のタイトルと関係あるのかなと思っていたので、今回『恋に落ちて』のブログを書くにあたって調べてみました。結論から言うとよくわからなかったのですが、映画の日本での公開が１９８５年３月で曲のリリースとドラマのスタートがそれから５か月後の８月ですから、やはり何らかの関係があるのかなと勘ぐってしまいます。いずれも不倫がテーマですしね。

　ということで、小林明子さんの「恋におちて -FALL in love-」です。私もカラオケで歌いまくったものです（笑）。

＜アカデミー賞５つの最強カップル＞

　私が初めてこの映画を観たのは今から３５年くらい前です。場所は当時勤務していた放送局の浦和支局。たぶん日曜日の早朝、泊まり勤務明けの比較的のんびりとした時間に職場のビデオで観たことを記憶しています。

　今回久しぶりに観て「あれっ？」と思ったのは、主人公の二人がいったん別れた後、次のクリスマス・イブに思い出の場所であるニューヨークの本屋で偶然また会っていたことです。私は、激しく降る雨の中、モリーが車を飛ばしてフランクに逢いに行こうとして危うく踏切に突っ込みそうになるところはけっこう鮮明に覚えていたのですが、ニューヨークでの再会は完全に頭から抜け落ちていました。

　まぁ、それはそれとして、再会した時、二人は互いに口には出さなかったもののそれぞれのパートナーとは別居中だったわけで、となると、その後どうい展開になるのか、おおいに気になるところです。

　それにしてもメリル・ストリープのパートナー役って、大物俳優ぞろいです。彼女にとって初めてのアカデミー賞である助演女優賞を受賞した『クレイマー、クレイマー KRAMER vs. KRAMER』（1979）ではダスティン・ホフマン（Dustin Hoffman 1937-）。『愛と哀しみの果て OUT OF AFRICA』（1985）ではロバート・レッドフォード（Robert Redford 1936-）。『マディソン郡の橋 THE BRIDGES OF MADISON COUNTY』（1995）(2021 6/5投稿）ではクリント・イーストウッド（Clint Eastwood 1930-）。そして『ディア・ハンター』と『恋におちて』ではロバート・デ・ニーロです。

　このうち『恋におちて』に出演した時、メリル・ストリープとロバート・デ・ニートは、いずれもアカデミー主演男優賞と助演女優賞を受賞していました。メリル・ストリープは、その後『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙 THE IRON LADY』（2011）（2022 9/25投稿）でも主演女優賞を受賞することになります。二人合わせてアカデミー賞が５つ。まさに最強のカップルです。

　ロバート・デ・ニーロは８０歳。メリル・ストリープは７４歳。さすがに『恋におちて PartⅡ』というわけにはいかないでしょうけど、二人がしみじみとした老境のカップルを演じたら、味わいのあるいい映画になるのではないかと思っています。そう思うのは、きっと私だけではないでしょう。

　最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

＜追記＞

　ブログの中で、今年の大統領選挙をめぐるロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープの動きに目が離せないと書きましたが、さっそくデ・ニーロさんがやってくれました。トランプ前大統領の不倫口止め料を巡る事件の裁判が開かれているニューヨーク市の裁判所前で５月２８日にバイデン大統領の陣営が開いた会見に参加し、「ドナルド・トランプはこの街だけでなく、この国も破壊しようとしている」と訴えたということです。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（Reuter ロイター）

　少なくともトランプ前大統領に対しては、デ・ニーロさんは「しみじみ」としているつもりはまったくないようです（笑）。

　ちなみにこの裁判、１２人の陪審員全員がトランプ前大統領に有罪の評決を下しました。

『恋におちて』 ～アカデミー賞５つの最強カップル～

『恋におちて』　～アカデミー賞５つの最強カップル～