たった1つの不具合は致命的で、私達の未来を決定させるものになろうとしている。
経験の拡散は、同時に、個体の情報を薄めてしまった。世界に散らばった私達種族、一人一人の個性は無数の記憶の共有により混ざり合い、個人の記憶、感情といったものも無数になり、全てのパターンが同時に反応する為にあまり意味が無くなってしまった。
情報の出元が曖昧になり、誰が何をしたのかわからなくなり、誰が誰なのか、自分は誰なのか。
私達種族の独特の情報の共有方法の1番最初は、共喰いから始まったのだろう、というのは、今の情報の共有から容易に想像出来るのだが、その時の衝動が薄まっているのは、逆に安堵している。
今、私達はお互いを捕食するわけではなく、肉体の交換と共に、記憶や経験と、外で吸収出来たお互いに足りない、活動するためのエネルギーを交換する、必要に応じて半個体に変化する肉体のおかげで。
私達の未来、
私達の個体数は沢山いるように見えるのだが、中身は、ほぼ1つの個体と言ってもいい。
つまり、この世界で私達種族は、もう、1人なのだ。生物の種として考えると、絶滅していると同義なのだ。
独特な肉体、蓄積された情報により、個体を増やす事は出来るのだけれど、私達種族に残された感情は、それを奮い立たせる衝動は湧き起こらないのだった。