とある小高い丘の上に、大きな大きな木が立っていました。
ブランコはその太い枝から下がっていました。
男の子と女の子はそのブランコに座り、丘の下を眺めながら仲良く遊んでいました。
「あそこの木、大きくなったね。」
「うん、大きくなったね。」
「街ができたね。」
「うん、できたね。」
とても長い時間、一緒に遊んでいました。
そのうちに二人の体は1つになりました。
半分が男の子、もう半分が女の子。
「三日月だね。」
「うん、三日月だね。」
「星がいっぱいだね。」
「うん、いっぱいだね。」
二人はいつまでも揺れていました。
ある晴れた日に女の子の命は終わりを迎えました。
半分になった男の子は3つの事を知っていました。
いずれこうなる事、女の子は形が変わっただけな事。
悲しくはありませんでした。
男の子は半分の体で、力いっぱいブランコをこぎ始めました。
「あの子が、家に帰れますように。」
「あの子が、家に帰れますように。」
知っている事のもう1つは、女の子が家に帰りたがっていた事。
男の子の心とブランコは揺れていました。
やがて、男の子の命も尽き、大きな木と、ゆれていないブランコだけ残りました。
長い月日がたったある日の夕暮れに、誰もいないブランコは揺れ始めました。
二人が戻ってきたかのように。
「ちゃんと帰れたね。」
「うん、帰れたの。」
「よかったね。」
「そうなの、よかったの。」
ブランコは、ゆっくり揺れていました。