ダレカ ワタシヲムカエニキテ……?
ここは、某所の(実在しない)ビスクドールショップ。ここを『お家』と呼ぶ人形達が多数いる。
人形達は新しい『里親』を求めて、ただ一点しか見つめない目で、ショップを通り過ぎてゆく人々の姿を見る。彼女達にとって、1日の大半が空白の時間だ。
ある人形、エミリア。エミリアは豊かなブロンドの髪とエメラルドグリーンの瞳が印象に残る''可愛いお人形''。エミリアは今日も、仲間と共に人間が街を行き交う姿を見つめる。
「ダレカ、ダレカ ワタシヲ ヒキトッテ…?ワタシ、イイコ ニ スルカラ…。」エミリアの小さな願いは虚しさを感じさせる。簡単に叶うものではない。それは、エミリア自身、よく知っている。自分を貰ってくれる人をずっと待ち続けても、なかなか現れない現実。
「ムタ゛ヨ…。イツマデモ、ユメミテナサイヨ」不意に、隣で声がした。このドールショップに居座り続けて長い大先輩ドール、ヴィクトリア。濃い色の茶髪のカールした髪には紫色したビロードのリボン、ダチョウの羽と本物のダイアモンドで飾られた漆黒色の帽子、紫色の袖が膨らんだドレス、ギラギラした人形用のアクセサリーを身に着けた一番目立つドールだ。
「ウ゛ィクトリア……ナゼ?ナゼ、アナタハ、イジワル、イウノ?」エミリアは尋ねた。
「ナニイッテルノ?ココデハネ、ナガイコト、モライテ…ナイコハ、ショブン…サレル。ソレガ、ワタシタチ、オニンギョウノ、サダメ」
「イヤヨ…!ショブンナンテ…ワタシタチ、コワサレルンデショ?ソンナノ…イヤ!」エミリアは悲しそうな表情をし、エメラルドグリーンの硝子細工の目から涙をポロリ、ポロリと流した。
「シカタナイ…コレハ、カエラレナイ。ワタシタチ、オニンギョウノ、ゲンジツ。」
