霧深き あしたの原の 女郎花
心を寄せて 見る人ぞ見る
「なべてやは」
など、ねたましきこゆれば、
「あなかしがまし」
と、はてはては腹立ちたまひぬ。
(源氏物語 総角の巻より)
「薫」は、「匂宮」に会いに行きました。
匂宮は、宇治の「中の君」に気があるので
薫一人だけで宇治を訪れていることを
妬ましく思っています。
「私も近いうちに連れて行ってよ。」と
薫に迫ります。
薫
霧深い朝の野原(宇治)の女郎花(中の君)
は、深い心を持った人だけが結ばれることが
できるのです。(あなたは軽すぎる)
「あなたの心ではとてもとても」
と、嫌味を言いまので、
匂宮
「なんだって、うるさいな!」
匂宮は、とうとう怒ってしまいました。
秋の野に なまめき立てる 女郎花
あなかしがまし 花もひと時
(古今和歌集 僧正遍昭)
秋の野に色っぽく立ち並んで咲いている
女郎花さんたち。うるさいことよ。
美しい花の盛りはひと時だというのに。
だから、薫! つべこべ言わずにさっさと
俺を中の君に会わせろ!