黛敏郎先生時代の「題名のない音楽会」は興味がある時は拝見して楽しみました。当時黛敏郎先生が晩年の分しか僅かにしか拝見できなかった(武満徹先生がお亡くなりになられてから直ぐに黛先生が後を追われるように亡くなりましたが偉大な才能を立て続けに失って残念に思われました)のですが、ありがたいことに幾分かYouTubeでアップされていて大変ありがたいと思われます。
今日は、ずっと以前から気になっていましたベートーヴェンの若い時代を浪曲でやった企画がありそれを見てみたいと念願していました。
その時は音声のみで振り返るという回でしたがそれでもずいぶんと面白くていつか見れたらと長く(それこそ25年近い年月が経ったかもしれませんが)念願していました。
それだけ心にずっと引っかかりがありましたが、先程偶々発見できて、早速拝見いたしました。
当時どなたが浪曲を唸っていたか知りませんでしたが、俳優の斎藤晴彦さんと知りました。
すみません、ご縁のない方でしたがNHK教育の夕方の子ども番組でお馴染みだった夕方クインテットのチェロ奏者のスコアのお声を担当されていました。このことも今日知って改めてお声がそうだったと思い出された次第です。
音楽に大変造形が深く、また長らく演劇畑にいらした真の実力者だったのではないかと思います。
さて、斎藤さんの浪曲「ベートーヴェン人生劇場」。
これは、玄人裸足ではないでしょうか。
三味線が入ったり、斎藤さんはお着物だったりしますし、ゲーテとの出会い、ルドフル大公に出会して全く取り繕うことをしないエピソード、はたまたナポレオン1世に交響曲を捧げるも、皇帝になって怒り狂う場面などを浪曲でそれは見事に唸っておられます。
冒頭、いささか浪曲に合わせるように軽く濁声で……
♪旅ゆけば〜あ〜 ラインの道にぃ〜 薔薇香りぃ〜
駿河の道に茶の香り……ではなく、これはなかなか捻ったなぁと思わず爆笑しました。
どうしても、ヨーロッパのハプスブルク家の繁栄よろしく、当時の洋服、建築物の香りがするような
(画像は全て拝借いたしました)
チェコの有名な湯治場、テプリッツの有名なホテルに着いて「松の間ご案内」ときたり、ゲーテとベートーヴェンのやりとりも任侠の道を極めたおわ兄さんのやりとりで、その間、バックでは9番のフィナーレの行進曲風の箇所、「エグモント」序曲のコーダ部分、3番等を斎藤さんは独自の歌詞で歌っていますが面白かったです。
ナポレオン1世が皇帝に就いた際に、朝日新聞⁈ で知ったり……。実に知的なセンスと笑いが素晴らしいと思われました。
浪曲と三味線、はたまたオーケストラと合唱のコラボレーション……。「題名のない音楽会」らしい誰をも想像しない興味深い企画でした。前から見たい見たいと本当に時折気になっては思い出されていましたが、ベートーヴェン生誕250年のアニバーサリーイヤーに導かれたかのように偶然発見した動画でしたが、これはお導きがあったからこそ拝見できたのだと感謝しています。
斎藤晴彦さんの多才さに触れることもできて有意義な一時でした。