ベートーヴェンの9番を豊かに意識できる歓び……。

賀状の作成に今も以前となんら変わらない環境でしたらきっと横目に見ていただけの9番でしたが今年は嬉しいことにゆったりとした時間のなかで連日集中して聞いています。

先般朝比奈先生の新譜をご紹介しました。早速昨日ご命日でしたので早朝聞いてみますと大阪フィルよりも鋭い音がするように感じました。




実は朝比奈先生の9番は長く触れず仕舞い、避けていました。日本人が歌う合唱付きだなんて……と変な差別を心中に抱えていましたし、大阪フィルのアンサンブル、録音の質などを意識し過ぎてのことでした。

繰り返しになりますが、意外にも柔らかくフルトヴェングラーのような叫びをイメージしていたものの、第1楽章の主題が例によって柔らかい大きな音で朝比奈先生はこのような特色を晩年はお持ちだったと改めて意識した次第でした。

第2楽章も事によれば狂うようにティンパニを強打させる演奏もありますが、羽目を外した印象はなく端正なベートーヴェンに先生をつけて呼んでおられた朝比奈先生の律儀さ、真面目さを感じました。

第3楽章はこれまた深い味わいがあり、格別なものではないでしょうか。それがティンパニとトランペットが演奏される高揚した箇所(すみません、聞き専ですから練習番号のアルファベットでどこそこといえません。お許しください)でピークに達してこれはミサ・ソレムニスのような祈りのような音楽を生で聞いた方は体験されたに違いありません。

フィナーレはこちらもいささか芝居がかった印象がしますが、個人は歓迎したいと思います。しかし、歓喜の歌に入る前の、テノールが行進曲風に歌う箇所でトランペットが強調されたり、コーダの部分でピッコロが強調されていたりと(明らかに)いじった? と聞こえてしまう部分があり違和感を感じました。効果を狙ったものでしょうがいただけませんでした。


朝比奈先生の9番は、入院中にヤフーオークションで落札した80年代のそれがとてもよかったように思います。


お元気そのもので、アンサンブルは聞いていてヒヤッとする箇所が幾つかありますがなんの、豪快そのものでした。



せっかくの9番のシーズンですから幾つか個人が気に入ったCDを貼り付けておきます。



フルトヴェングラーは数種ある中でも個人はこの怪演的な42年盤を第1にしています。

絶叫するような感じ、ドラマティックという言葉では足りないような凄まじいエネルギーが42年盤はあり、こぞって神格化されている51年バイロイト盤よりもこちらを取っています。

フィナーレの速い速い終わり方を初めて聞いた時、この方には、なにか指揮中に乗りうつるのだろうかと呆気に取られてしまいました。それから一時期中毒になりました。



見本たるべき、端正なシューリヒトさんの9番。アンサンブルには定評があったパリ音楽院との全集ですが、幸い9番はステレオ盤があり、愉しむことができます。

さらっとした中にも深い味わいがあり、好きな演奏です。中庸の美の極致といったところでしょうか。



初めて聞いたベートーヴェンの9番。
音の良さとオーケストラの質の高さに驚きました。

第4楽章で歓喜の歌の旋律を低音部が演奏した時、とても感動しました。何度も聞いた思い出があります。

それから……80年代のこのカラヤンの全集は70年代のそれにはエネルギーの点では勝てないと思いますし、オーケストラとの距離と体調が芳しくないようなところが音楽から感じられて、人に差し上げてしまいました。すみません。



素晴らしい77年来日時のライブ盤です。信じられないくらいのエネルギー、集中力……。カラヤンらしさ を随所に感じる1枚です。素晴らしいと思います。

ただ、合唱がカラヤンの御用達たるウィーン国立歌劇場合唱団ではなくプロ合唱団連盟と東京藝術大学合唱団で、ご不満そうだった……と雑誌に載ってあったように記憶しています。



テンシュテットさんの熱演も外したくありません。全力疾走した感があります。歌う、熱く語る……。音質こそ、そこそこですが演奏は凄い。この方の喉頭癌が恨めしく思われてなりません。



57年のクレンペラー御大のありがたいステレオライブ盤。この方も奇をてらったことはしていないものの、スタジオ録音との温度の差があり、盛り上がります。



楽譜を徹底的に見直して細部にまでこだわったノリントンさんの9番。百面相のような凡ゆる表情をもって何度聞いても発見があるようなベートーヴェンでした。

第3楽章のスピィーディな演奏は朝比奈先生と極にあり聞いていてワクワクします。全く飽きません。



これはお値段としてもお勧めしているジンマンさんのベートーヴェン。こちらもベーレンライター版を世に知らしめた全集でした。速く、さらっとしたベートーヴェンに耳を疑いながら楽しみました。




山田一雄先生もあげます。熱血漢的な後期ロマン派の薫陶を受けて終生音楽青年のような熱い思いに溢れた山田一雄先生の9番も聞き応え十分で、意欲的なお姿が思い浮かぶようです。


他にも幾つかありますが、来年の年末にでも取っておきます。

今日は音楽を聞かずにいます。時にはブログで音楽以外にも書かなくてはなりませんが、全く引きこもりで脳内に引き出しを沢山持っていませんので限界がありますが、更新できるようでしたらしたいと思います。