押入れの棚で、雛人形たちが、出番に向け、スタンバイしていると思うと、はやく出してあげなければと、焦る。
先日、やっと雛人形を飾った。
家族のなかで、紅一点の私は、自分のために、お雛様を飾ることになる。
義理の母の手作りの、お内裏様とお雛様が登場する。
ちりめんや和紙、紙粘土などを材料にして、着物、ぼんぼり、金屏風などを丁寧に作ってある。
私が、幼い頃に飾っていた雛人形は、実家にある。
ふっくらとしたお顔で、なんてきれいなんだろうと思っていた。
三人官女の手に、三方などのお道具を持たせる。
五人囃子に、横笛や太鼓を持たせ、嫁入道具の箪笥を並べる。
関東風と京風とで、雛人形の並びや、道具にも違いがあるようだ。
毎回、お雛様が右か左かで迷った。
五人囃子の並びも、その年により、違ったかもしれない。
一般的には、お内裏様が向かって左にくる。
五人囃子は、鳴り物の音の大きい順に、向かって左から並ぶ。
毎年、私は、雛人形の飾り付けを楽しんでいた。
実家の母が言っていた。
お雛様を出してあげない年は、押入れの中で、泣いている。
そして、雛祭りが終わったら、早くしまわないと、お嫁に行くのが遅くなると。
私は、半分は本気にしていた。
この時期になると、気になる。
お雛様、泣いていないかな?
そして、一緒に思い出すことがある。
私がお嫁に行く気配を感じて、母が泣いた時があった。
遠くにいってしまうのは、さみしいと言って、泣いた。
母は、身体が丈夫でないため、私には、それほど遠くに思えなくても、母にとっては、とても遠くに思えたのだと思う。
雛祭りは、華やかで、楽しい。
でも、切ないような気持ちもある。
この頃は、母に大切に育ててもらったことを身にしみて感じる。