このことも書きつけておこうと思う。
どのダイビングスポットだったのか、思い出せない。
海の中で、どんな景色を見たのかも、まったく覚えていない。
八幡野で見たカクレエビ。
大瀬崎の夜光虫。
伊東のコブダイ。
ダイビングスポットと、そこで見た印象的な生き物はつながり、記憶に残っていることが多い。
けれど、そういうことではないのだ。
そこで見たことは、もっと忘れられないことだった。
私達は、ダイビングを終えて、シャワーを浴び、堤防のあたりを歩いていた。
泣きながら、怒って何か言っている若い女性を見た。
尋常でないものを感じた。
そして、人伝いに聞こえてきた。
ダイビングに来ていた友人同士の2人組の女性のうち、1人が行方不明だ。
誰か助けに行っているのか?
行くことができないのか?!
何もできない。誰か…。
ただ、立ちすくむだけだった。
そんな中、私達のガイドインストラクターは、静かに厳しい様子で、準備を始めた。
ウェットスーツにふたたび着替え、タンクを背負った。
潜ってから何分たったのだろうか。
時間がどんどん過ぎていく。
そして、テトラポットから2、30メートルほど離れたあたりに、私達のガイドが浮かび上がった。
見つかったのだ。
私は、ずっと震えがとまらなかった。
私達は、 彼女の意識が戻り、助かることを強く強く祈った。
みんな同じ思いだった。
ダイビングは、危険が伴うものである。
私達はそれを覚悟した上でやるのだ。
ガイドやインストラクターが、どれだけ真剣にその仕事に取り組んでいるのかを見極めることも、とても重要だ。
いざとなったら、責任から逃げてしまう人だっている。
海が好きだから、この仕事につきましたということだけでは済まないのだ。
命を預かることの意味を理解しなければならない。
それを理解し、覚悟もあった私達のガイドは、危険に対応できるだけのスキルを身につけていた。
強い使命感を持った魂に、頭がさがる。