タイトルそのまま。2016-17年頃の出来事を、主観に基づいて3章にまとめて話しします。



1.そもそもなにが起きたか
夜舞サヲリの主演エピソード(以下、エピ)のうち、名作としてよく挙げられるのが、2.5エピの「笑顔の壁」だと思う。

episode2.5「笑顔の壁」
正直、自分としてはこれ一本だけを名作として挙げることは疑問だが……

この2.5エピが配信された当時、反応はどうだったかというと、支配人全体でいえば好意的だったと記憶している。
ただ、サヲリ支配人の一部には困惑した層もいた。そして、これを書いている自分自身も、非常に困惑し、疑問を抱いた一人だった。

本題について話す前に、当時のサヲリについて整理したい。
2016年秋までの夜舞サヲリはといえば、思いっきり人生を満喫しているような、そんなゲームへの露出の仕方をしていた。

「雪と乙女心はまだ遠い」より
トモエとサヲリは良い友人だと理解できたが、まさか同じユニットになるとは、この時点では思いもしなかった

1月のイベントエピソード「雪と乙女心はまだ遠い(以下、トモサヲミミエピ)」で女の子としての幸せも追い求めるとトモエやミミと誓い、5月には猫とイチャつき、8月には海でバカンス。
細かい年表を見たい方にはこちらをご覧いただくとして、サヲリ推し、というか自分はこの時点でこの展開に好意的だった(というか、アイドルゲームをプレイする層に、アイドルが楽しげに過ごしているのを不快に思う人などいるだろうか?)
こうして、毎日を楽しむサヲリの姿は、皆に受け入れられていた。

そこへやって来たのが2.5のシリアスなシナリオだった。
単刀直入に言ってしまえば、今までとの温度差に困惑した、というのが最初の感想だったかもしれない。
困惑だけなら良かった。が、落ち着くにつれ、疑問点も浮上してきた。

2.サヲリ推しもとい自分は2.5にどんな疑問を抱いたか

1月には呑気にスノボを滑らせてたサヲリが、いきなりアイドルとしての目標を持って出てきたのは何故か?

そのあまりに無茶な目標を誰も現実的にほとんど可能性がないと言わないのは無責任ではないのか?

その目標のため頑張る一人の中学生を、見守るだけでなく支えてやるという仲間はいないのか?

疑問は他にもいくつも沸いてきたが、要点を絞ればこの3つになった。

振り返ってみると、サヲリの2.5エピは、その全体が異常事態のシナリオになっていたと思う。
サヲリの登場するシナリオなら多少は逞しくなる支配人は頼りにならず、頼みの綱のサワラとコニーは助言と見守る以外なにもしない。
この二人はサヲリの成長を見守っていたという見方も出来るが、後述のエイやシャオのことを思えば、距離が離れすぎていると感じた(コニーはともかく、サワラのそれは仲間の距離感じゃないのでは……?)。

こういった環境に加えて、主役のサヲリ自身にも違和感を受ける要素があった。突拍子もなく、アイドルとしての目標を持っていたからだ。

777の12人ならともかく、1.0を与えられていないアイドル達のほとんどは、ナナスタに加入した動機、即ちアイドルとしての目標を語る機会は少なく、また、目標自体を持ち合わせていない
そんなアイドルの一人が、最近までアイドル生活そのものを楽しんでいた中学生が、唐突に目標を持って、唐突にアイドルとして走り始めた

根拠のない、印象だけの言い方になるが、2.5より前の夜舞サヲリというのは、他人を笑顔にすることに積極的ではなかったと思う。
1.5エピでは結果的にファンを増やしたという結末だったが、本人は良いことをしようと意識的になっていたわけではなかったし、トモサヲミミエピでは『ヤマイズム』という造語が登場したものの、これの意味としては「他人に迷惑をかけず自己完結する」というもので、受動的なものだった。

ところが、2.5エピになった途端、アイドルとしての目標を掲げ、積極的になった優しいサヲリ』となっていた。
個人的には、そのいつの間にか目標を掲げていたという状況も、その目標に伴って姿勢を180度といっていいほど変えるサヲリも、違和感の元となっていた。加えて、他人のためなら傷つくことを躊躇わない、その姿勢が危険なものに写った。

そしてなにより、その目標自体実現の不可能な、早晩失敗しても不思議でないものだったから、当時のサヲリ推しはといえば、「どう失敗して、どう成長できるか」と、上手く不時着することがハッピーエンドという前提で話していたと思う。

こうして、明らかに背負いきれないとわかる目標を無理に抱え、脈絡なく『優しいアイドル』として走り始めたサヲリと、それを止めるでもなくただ見守る周囲(≠仲間)に、いつサヲリが壊れるかという、そして、周囲の人間としての異質さという恐怖を感じるようになった

なにより、一番怖かったのは、唐突に優しくなってしまって、人間として美しく、しかし危うくなったサヲリだった

ロナの2.5エピを踏まえれば、確かにサヲリを止めることはナンセンスだったかもしれない。加えて、後のセブンスエピのため、この話は重要だったのだろう。
だが、2.5だけ見たストーリーは、主役も、周囲も、背景も、確実にアンバランスで、危なっかしいものだった。

3.その後
続くサヲリの主役エピは、1年後、2017年の3.5エピ「たまには誰も傷つかない一日」まで待つことになる。


episode3.5「たまには誰も傷つかない一日」より
2.5の鬱憤を晴らす勢いの支配人無双である

別のサヲリ推しの方がブログで述べられていたように(リンク貼っていいか聞く予定)2.5と3.5は逆に出してよかった、という意見に自分も落ち着いた。
仮に「仲間の支え」や「その仲間のために自分も大切にする」ことを描いた3.5エピが先に出ていたなら、サヲリが一人で突っ走っているという印象も受けなかっただろうし、上述した2.5からのサヲリの危うさや、周囲への疑問もなかっただろう。

ただ、支配人が絡まないということでほぼ一貫している2.5シリーズだからこそ「笑顔の壁」は描けたのかもしれないし、セブンスエピが控えていることを考えると、あのタイミングであのシナリオを出す他なかった、という事情もあるのかもしれない。いずれにせよ、今となっては「もしも」の話にしかならない。

ともかく、2.5の続きとしての3.5があるのなら、「笑顔の壁」のオチとしての3.5も含めての「名作シナリオ」とするべきではないか、と考える。
2.5一本のみでは片手落ちになる。3.5も併せて、初めて一本のシナリオとして完成したのだから。

・終わりに
3.5シナリオは、2.5で受けた呪縛を解いてくれたと感じている(甘々で読んでいられなかった? 同担以外口を挟まんでくれ)
では2.5は苦痛しか残さなかったかと言えば、そんなわけはない。

episode3.0「咲け、花のように」より
つらい

サヲリの抱いた目標が今もそのまま続いているか、画面の外で破れたか、それはわからない。しかし、続いているにせよ、潰えたにせよ、それが糧となっていることは間違いない。

つまり、こちらの懸念など気にせず、逞しく成長する恐ろしいアイドルこそ、夜舞サヲリなのだろう。もうとっくに、支配人が教えられることなどないかもしれない。
そんなサヲリがどのような場所に行き着くか、これからも食らいついて、付いていきたい。