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世界陸上・イシンバエワ決勝進出

世界陸上・イシンバエワ決勝進出




 “女版・ブブカ”が彼女の呼び名だ。世界記録更新35回というセルゲイ・ブブカ氏からとって、こう呼ばれる。女性で唯一の5メートルジャンパーとして、孤高にその空間に挑んでいる。一方では、跳躍の間にスタンドに手を振ったり、投げキスを送り、キュートな一面をのぞかせる。記録と美しさの両面で“魅せる”。それがイシンバエワ選手だ。

 踏み切った瞬間に、体全体が棒と一体となり、バーに向かって突き刺さるように浮き上がる。一瞬、体がフワリと宙に舞いバーを越える。そして体操の着地のように、つま先までピタッとそろえて落ちていく。その一連の動作は、まるでトビウオが気持ち良さそうに水面を跳ねているようだ。

 5歳のときから体操選手として活躍し、身長が高くなった15歳で棒高跳びに転向。柔軟さをいかし、芸術的とまで言われるフォームを身に付けた。

大逆転のアテネ五輪金

 アテネ五輪は大逆転の金メダルだった。04年8月24日、スベトラーナ・フェオファノワ選手(ロシア)とイシンバエワ選手の一騎打ちとなった激戦は、フェオファノワ選手が4メートル75に成功。3回連続で失敗すると競技は終了するため、すでに2度連続で失敗したイシンバエワ選手は、後がなくなった。

 「完全に混乱してしまった」と振り返る。スタンドのエフゲニ・トロミモフコーチの元に駆け寄ると、「今までやってきた通りに跳べば大丈夫」と声をかけられた。一呼吸おき意を決すると、バーを上げ4メートル80に挑戦。バーを越えた瞬間、空中で両手を広げ、感激を体全体で表しながら着地した。

 勢いづくと、世界新の4メートル91も成功。「ブブカが35回の世界新をマークしたので、私は36回の更新が目標です」と宣言し、周囲を笑わせた。


07年08月28日(火) update.

精神統一をする、イシンバエワ

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19度の世界記録更新

 快進撃は05年になっても続いた。世界新の更新回数にこだわり、1センチずつ記録を伸ばしていったイシンバエワ選手。世界新には大会スポンサーからボーナスが贈られるため、批判する声も出た。

 しかし元社会主義国だったロシアの選手は、資金援助に頼らず、自らのトレーニング代を賞金で稼ぐのはむしろ当然。「私は跳躍のプロ。みんなに注目されるのもうれしいし、観客を喜ばせようと思えば、高く跳べるんです」とさらりと言ってのけた。

 世界で初めて5メートルを跳んだ女性となったのは、05年7月のスーパーグランプリ英国大会。同年8月の世界選手権(ヘルシンキ)では5メートル01に記録を塗り替えた。06年末現在の更新回数は19回だ。

子供を産んで良い家庭を

 9月24日、日本で開催されたスーパー陸上(横浜市・日産スタジアム)の会見で、可愛らしい一面を見せた。会見に同席した室伏広治選手に「スポーツ以外での人生の目標は何?」と質問したのだ。そして「私は女なので、結婚して子供を産んで、良い家庭を作ることが目標です」と話し、室伏選手に笑みを投げかけた。

 試合では、孤高の“鳥人”。しかし試合の合間にふとのぞかせるキュートな一面が、世界中のファンをくぎ付けにして放さない。








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