陸上日本選手権 女子1万で福士が6連覇、世界代表に内定

陸上日本選手権 スタンドの歓声に応えながらVサインでゴールする福士

6月30日10時20分配信


スタンドの歓声に応えながらVサインでゴールする福士=長居陸上競技場で29日




陸上の世界選手権(8月25日開幕、大阪)の代表選考会を兼ねた第91回日本選手権が29日、大阪市長居陸上競技場で開幕した。第1日は男女8種目の決勝が行われ、女子1万メートルは福士加代子(ワコール)が32分13秒58で6連覇し、代表に内定。

4月に世界選手権参加標準記録A(31分40秒)を切った高校生の絹川愛(宮城・仙台育英高)も3位に入り、代表入りが有力となった。女子3000メートル障害では早狩実紀(京都光華AC)が自らが持つ大会記録を更新して2連覇、代表に内定した。男子やり投げは村上幸史(スズキ)が標準記録Bを上回る79メートル85で8連覇。女子棒高跳びでは近藤高代(長谷川体育施設)が標準記録Bの4メートル30を跳び、2年ぶり5回目の優勝を飾った。女子走り高跳びは青山幸(大阪陸協)が2連覇。

男子400メートル障害予選では昨年のドーハアジア大会金の成迫健児(ミズノ)、世界選手権で2度メダルを獲得している為末大(APF)が危なげないレース運びで決勝に進出。男子200メートル予選では末続慎吾(ミズノ)が20秒63で決勝に駒を進めた。


 ◇エチオピアでの練習が奏功…福士
 福士が両手を挙げて笑顔でゴールした。女子1万メートル決勝。7000メートル過ぎから独走での6連覇。今春、刺激を求めて長距離王国・エチオピアに渡った効果が表れた。


 展開は福士らしくなかった。1周が80秒近くかかるじりじりとした超スローペース。集団の前に出された渋井が「(福士が先頭に)出ると思った」と言うのも無理はない。福士の力を持ってすれば、これまでのレースのように突っ走ることも考えられたはず。だが、今の福士にとってはそれは意義を持たなかった。


 今春、2度に渡ってエチオピアに渡った。世界トップクラスの選手と一緒に、自然の中でクロスカントリーを走った。福士は「すごい走りを肌で感じられた。走る姿の映像が鮮明に頭に残っている」と、言葉では言い表せない効果を口にした。
 「レース中には出来なかったけど、どんどんリズムを上げる向こうの選手みたいなアップが(レース前に)できた」と福士。レースでは7000メートルまでじっくり中盤をキープ。そして、一気にペースアップをして最後の3000メートルを9分23秒と、最初の3000メートルよりも30秒も縮めるタイム。世界の長距離レースの主流になっている後半重視の展開だった。

 前回の世界選手権では5000メートル12位、1万メートル11位。世界選手権代表に内定した福士は「入賞が目標」ときっぱりと言い切った。世界と対等に戦うために、福士がさらなる進化を遂げようとしている。

 ◇末続が貫禄見せる…途中、トップに立つと後は流す
 男子200メートルの予選で、大会2連覇を狙う末続が貫禄を見せた。


 低い姿勢で飛び出すと、コーナーを抜ける前にトップに立つ。直線に入って一度左のレーンを見ると、後は流して20秒63でフィニッシュ。末続は「車で言えば試運転。ギアは3速ぐらいかな。あと一つ入ればいいんだけど」と。決勝での快走に期待を抱かせる、余力十分の走りだった。


 04年アテネ五輪で予選敗退した100メートルへの思いを振り切り、200メートル一本に絞ったシーズン。もはや迷いはない。今季の目標は、03年パリ世界選手権で3位に入り五輪・世界選手権を通じて日本短距離界に初のメダルをもたらした記念すべき種目で、再び決勝に残ること。アジア記録保持者は「僕の課題はコーナーの出口。そこを磨いてきた」と、目標実現のための具体的な課題を口にした。


 「会場を魅了する走りをしたい」という決勝を制すれば、世界選手権の切符が手に入る。世界選手権は、末続が「記録は19秒台の選手と走った時に狙う」と位置付ける舞台でもある。

 ○…男子400メートル障害の日本記録を持つ為末が、新たな試みに挑戦している。これまで15歩だった7~8台目、8~9台目のハードル間の歩数を1歩ずつ減らす走法。歩数が減れば必然的にスピードも増すという考え方だ。「武器になると実感した。(歩数を減らす部分の)練習はたくさんしたが、通して走ってみると難しい面もある」と為末。向上心を失わない29歳のベテランが、2年ぶりのタイトル奪還に強い意欲を見せている。


 ○…男子5000メートルでただ一人、世界選手権のA標準を切っている三津谷(トヨタ自動車九州)は冷や汗のレースになった。スタート直後から集団の先頭に位置取ったのが失敗だった。残り2000メートルで飛び出した松宮隆についていけずに、逆にジリジリと後退。一時は7位まで順位を落としたが、ラスト1周で何とか盛り返しての2位。優勝ならば2大会連続の世界選手権出場が内定した三津谷は、「松宮さんの切り替えに対応できず、ちょっと守りに入ってしまった。途中はやっちゃったと思いました」と苦笑いだった。


 ○…男子やり投げでは村上が大会8連覇を達成した。2週間前に練習中に左わき腹の肉離れを起こし、「ぶっつけ本番だった」と村上。1投目から記録が伸びず苦しんだが、5投目に2度目の世界選手権参加標準記録Bを突破する79メートル85をマーク。逆転で優勝を手にした。「(8連覇は)意識してなかったけど、負けたくないという気持ちはあった」と村上。だが、満足はしていないようで、「1投目に確実に記録を出せるようにしないと」と反省を口にしていた。



最終更新:6月30日10時20分