第17戦日本GP/鈴鹿プレビュー

F.アロンソに同点で並んだ。7勝対6勝。勝利数ひとつリードには大き意味がある。

 第16戦中国GP、雨の上海サプライズ・ウィンで遂にM.シューマッハが

 もし第17戦日本GPでM.シューマッハが8勝目を挙げ、アロンソが無得点の結果に終わったならば、タイトル争いは最終戦を待たずに決着だ。アロンソがブラジルGPに勝って再び同点としても、勝利数では及ばないからだ(F1では、同点の場合は最終的に優勝回数の多い者が上位とされる)。鈴鹿でシューマッハ10点、アロンソ0点となる確率はとても低いとはいえ、勝利数でリードされているアロンソとルノー・チームのプレッシャーは傍目以上に大きいだろう。リタイアは絶対に許されないのだから……。

 鈴鹿での戦いを具体的に見ていくと、両チームのマシンパフォーマンスは、ほとんど差がないと言っていいだろう。シューマッハもアロンソもマシンの戦闘力をフルに引き出し、このふたりだけが飛び抜けて速い。中国GPでは、両チームのNo.2ドライバー、フェラーリのF.マッサとルノーのG.フィジケラが肝心な場面でスピンしたりと、小さなミスが目立ったが、鈴鹿ではこのふたりがエースをどれだけサポートできるか。コンストラクターズ選手権としては、もちろんそこがポイントになるが、マッサがアロンソを、フィジケラがシューマッハを押さえ込む展開はとても考えにくい。

 ただしフェラーリはマッサが中国GPでリタイアしたために、日本GPではノーペナルティでフレッシュエンジンを積むことができる。シューマッハとアロンソの対決は中国GPと同じ2戦目エンジンで争われるが(フィジケラも2戦目)、マッサの場合はその点においてややアドバンテージがあるかもしれない。

 高速テクニカルコースの鈴鹿では、イタリアGP(モンツァ)ほどではないにしても、ピークパワーで勝れば確実にタイムは向上する。2.4リットルV8エンジンに変わり、鈴鹿の表ストレート800m、裏ストレート1200mでの最高速は、これまでよりもかなり下がったが、コーナリング速度はアップしている。1コーナーから2コーナー、S字区間からデグナーまでは今まで以上に高速アタックが見られるはずだ。また、それだけアクセル全開率が上がると、エンジンにはかなりの負荷がかかる。決勝レースの天候にもよるが、低温になればなるほどパワー特性が変化するので、鈴鹿ではそこも注意してみたい点だ。

 接戦パフォーマンス・バトルが予想される鈴鹿で、勝負を左右するのがピットストップだ。中国GPではアロンソが2回目ピットインの時に、右リアタイアの脱着交換に数秒のタイムロスがあった。「このこと自体が敗因になったのではない」とアロンソはチームをかばったが、8月のハンガリーGPでもピットストップ後にホイールナットが外れて飛ぶアクシデントでリタイアしている。ルノー・チームのクルーたちが、そんなプレッシャーをはねのけ、スピーディーな作業を確実にこなしていけるか。鈴鹿ではピットイン及びクルーたちのピット作業が、いつものレース以上に緊迫した場面になりそうだ。

 シューマッハ/BSとアロンソ/ミシュラン。この両者の戦いはタイヤメーカー両陣営にとっても重要な一戦になる。こちらの戦いは、終盤戦に突入してから、レース結果に表れているほどの性能差はないと、僕は見ている。ただ、その日、その時の路面変化によってごくわずかのアドバンテージが移り変わり、それを活かしきったほうが結果を手にしているといったところだろう。

 BS陣営には地の利というアドバンテージがある。レースぎりぎりまで投入スペックを待ち、小平工場から鈴鹿に数時間で運び込むという作戦がとれる。一方ヨーロッパのミシュランは、あらかじめいくつかのスペックを空輸しておき、鈴鹿で最終選択する作戦だが、ロジスティック的にはちょっとつらいというのが正直なところだろう。

 20回目・鈴鹿が歴史的なシューVSアロンソの王者決定戦になるとともに、今季は1勝を挙げ地元GPを迎えるホンダ・チーム。5年目の進歩を刻んでいるトヨタ・チーム。いよいよ母国デビューを飾るアグリ・チームなど、日本チームの戦いも目が離せない。また日本人ドライバーの佐藤琢磨と山本左近のふたりが母国GPでどこまで這い上がってくるか。今年の鈴鹿はトップ争い以外でも見どころが豊富だ。白熱のバトルが同時多発的に展開する。それが今回の“鈴鹿ラストゲーム”だ