亀田興毅:減量きつい

 ボクシングWBA世界ライトフライ級新王者の亀田興毅(19=協栄)に、タイトル返上の可能性が浮上した。王座獲得から一夜明けた3日、興毅は東京・赤坂のTBSで会見。苦戦の理由として、12戦目で初めてライトフライ級(リミット48・9キロ)で戦ったため、減量の影響があったことを認めた。その上で初防衛戦を行わずにタイトルを返上する可能性を示唆した。次戦から本来のフライ級(同50・8キロ)に上げ、2階級制覇を目指すプランが浮上している。

 微妙な判定による世界初戴冠は大きな波紋を広げている。中継したTBSへの抗議電話は実に5万5000件。日本ボクシングコミッションや協栄ジムの電話も鳴りやまなかった。そのほとんどが興毅の勝利を疑問視したものだ。しかし、新王者は意に介さない。「言いたいことがあったら言えばいい。人それぞれにいろんな見方があるからな」

 目標の3階級制覇に向けて第一歩を踏み出した。ただ本来の調子ではなかったのも事実だ。興毅も「(減量は)スムーズにいったけど、この体重(48・9キロ)まで落としたのは小学6年以来やからな。(影響は)分からんけど、パンチに体重がのらんかったし、フライ級の方が体が動くかもしれない」とハンバーガーをほおばるパフォーマンスを見せたが減量の影響があったことを認めた。その上で「3階級の中で一番難関だったのを獲れたし、次につながる」と続け、ライトフライ級の防衛に固執しない意向を示唆した。

 金平桂一郎会長(40)も「きのうの動きを見ると、やっぱり減量がきつかったのかも。王者だから防衛戦をやらなきゃいけないという気持ちもあるが」と王座返上の可能性をにおわせた。

 人気者故、興毅には負けられない宿命がある。「負けたら次はない。勝ったから次もある」とも興毅は言う。減量のリスクが伴うライトフライ級を回避する構想が浮上してくるのも無理はない。複数階級制覇を狙う場合、階級を上げていくのが普通で、下げた興毅の場合は特殊なケース。加えて無敗にこだわるなら、本来のフライ級に戻すことが最善なのだ。

 国内ではWBA世界ミニマム級王者の新井田豊(27=横浜光)が、01年8月にタイトル獲得も、モチベーションの低下から、防衛戦を行わず一度タイトルを返上した例がある。タイトル返上もルール上は全く問題ないだけに、その判断は王者陣営に委ねられる。

 次戦開催の時期も、ダウンを喫した上に12回フルに戦い抜いたことによるダメージが残っていることから微妙。当初は10月にノンタイトル戦を行い、大みそかにWBC世界ライトフライ級王者のブライアン・ビロリア(25=米国)と国内初の2団体統一戦、もしくは指名試合でWBA同級3位のビッキー・タウミル(32=インドネシア)と初防衛戦を行う方針だったが、金平会長は「次戦の時期とかは全く考えていない。お父さんと本人と話し合って決めたい」と慎重な姿勢を崩さない。勝ち続けなければならない存在だからこそ、興毅は難問を突きつけられたことになる。

 <興毅に聞く>

 --世界王者になって一夜明けた今の心境は?

 「まだ実感ないな」

 --初めてのライトフライ級の試合だったが。

 「まあ、最悪の状態で勝ったから。1回にダウンした時“よっしゃー”と思った人もおったやろうけど、あれはオレのサプライズや。オレにとって難関の階級でベルト獲れてよかったよ」

 --判定勝利にはファンからも多くの抗議が届いている。

 「ジャッジそれぞれに判断基準がある。手数を取る人やクリーンヒットを取る人、アウトボクサーが好きな人、ファイターが好きな人もいる。でも、オレは結果を残すだけやから」

 --視聴率は瞬間最高52・9%(関東地区)を記録した。

 「100%には程遠いな。でも、オレは精いっぱいボクシングをするだけ。視聴率は後からついてくるものやからな」

 --今後についての考えを聞かせてください。

 「とりあえずオヤジのボクシングで世界王者になれた。もっと練習して、今度は自分のベルトを獲りたいな」