元ノルディック複合日本代表選手荻原次晴さんが

「めちゃくちゃレベルが高い」と評する障害者スポ

ーツ。そんな競技の魅力や意義、そして今後のあ

り方を、荻原さんが武隈晃教授にインタビューしま

した。 障害者スポーツ研究の第一人者である武

隈教授が語る「二つの夢」とは?

武隅晃
Photo by 岩本勝暁
武隈晃 (たけくま・あきら)

1958年6月30日生まれ。鹿児島大学

教育学部教授。専門はスポーツマネ

ジメント非営利組織論。筑波大学大学

院修了後、慶應義塾大学、鹿児島大

学講師を経て、1990年から助教授、

2004年から現職。著書に

「The Management of sport(訳書)」

、「スポーツ経営学(共著)」(以上、

大修館書店)、「生涯学習生活とス

ポーツ指導(共著)」(北樹出版)など。

荻原次晴 (おぎわら・つぎはる)

1969年12月20日生まれ。群馬県草津町出身。幼少

の頃から双子の兄・健司とスキーを始め、2人で切磋

琢磨しノルディック複合で日本を代表する選手となる

。1994年からワールドカップに参戦。1998年長野五

輪では個人6位、団体5位と入賞を果たす。五輪終

了後引退を表明し、ウインタースポーツ普及の為に

メディアや講演会の活動を行っている。

荻原次晴
Photo by 岩本勝暁

荻原

武隈先生は障害者スポーツについていろ

いろ活動されているそうですが、いつごろ

から始められたんですか?

武隈

研究は1980年代後半からですが、関心を

持ったのは学生時代です。車いすバスケ

ットボールを初めて見て、イメージと違った

んですね。とにかく上半身がたくましいこと

に驚いた。それに、段差をらくらくと乗り越

えていく姿に、カッコいいと思ったのが最初

の印象です。

荻原

現在、夏のパラリンピックはいくつ競技があ

るんですか?

武隈

アテネ・パラリンピックでは、19の正式競技

が行われました。それに対して冬の(トリノ)

パラリンピックは4競技。数の上では、夏と

冬にまだ差があります。

荻原 僕、ゴールボールはやったことがありますよ。
武隈 激しい競技でしょう
荻原

選手たちは、何か研ぎ澄まされた感覚を持っ

ているんですよね。鈴が鳴る方向にパッと跳

んで、ちゃんとボールをつかむ。僕なんて、何

となく右か左かは分かっても、距離感がつかめ

ない。しかも投げるときに、ボールを持ったま

ま思い切り床をたたいて突き指しちゃった(笑)。

目を閉じると、自分の手のひらと床の距離感さ

え分からないんですよ。

武隈

視覚に障害がある方のマラソンはよく知られ

ていますが、短距離走だってあるんですよ。

200mなんてトラックのコーナーを、カーブし

ながら走っていくわけです。もちろんガイドラ

ンナーはつきますが、巧みなコーナーワー

クでゴールしていく姿は、本当にカッコいい。

荻原

僕は冬のクロスカントリーで、視覚障害の女

の子と一緒に走ったことがあるんです。す

ると、ガイドの言うことを信じて、すごい勢い

で行っちゃうんですね。

武隈

度胸があるということと、ガイドを信頼してい

るということですよね。あのパートナーシッ

プは、ほかにはマネができない、一つのス

ポーツの形だと思います