仕事というものはどんなモノでも大変であることは間違いない。
医療、介護、開発、製造、運送、農業、、その一つ一つが大事であり、私達の生活を円滑に、快適にしてくれる。
私はパートで喫茶店の店員をしているが、これだってかなり重労働だ。
乗せきれない程のグラスを乗せたトレイを、左の手のひらに乗せ、
右手には重いお皿を何枚も重ねて運んだりする。
指の関節は腫れて膨れ上がり、手首は腱鞘炎になりかかっている。
一日中歩き回り、膝はガクガク、、。グルコサミン、コンドロイチンのサプリは毎日欠かせない。
そして体重が増えると膝がやられてしまう。
水が溜まり、医者に注射針で水抜きをしてもらっている人も居る。
体だけでは無く、訳の解らない我儘を言うお客の対応にも、精神が疲弊する。
たまにあるオフは、溜まった疲労を取り除く為に使われる。
つかれきった体では、何処かに遊びに行こうなんていう気にもならない。
とにかく回復力が遅いのだ。もう若くはないと言う事か。
ああ・・・もうこんなキツい事は辞めてしまいたい。。だがやめるわけにはいかないのだ。
私にはローンがある。それを返済するためには絵の仕事だけでは追いつかない。
でもできれば喫茶店はやめて絵に専念したい。夢に向かって進みたい。
、、とまあ、ひとしきり愚痴った後で気分を変えよう。
私は絵の他に、気まぐれに小説のようなモノを書くときがある。
それはショートショートであったり、未完の長編であったり、
児童向けファンタジーやオトナの為の読み物。。ジャンルはさまざまだ。
今夜はビールを飲みながら気分良くパソコンをいじっている。
オトナの為の読み物の、冒頭を書いちゃおうかなぁ・・・
お嫌いな方はここでストップ。
「海の香り」
彼女を抱くと、いつも海の香りがした。
それは遠い太古の昔を思い起こさせるようなどこか懐かしい香り・・
腕の中の彼女は最初は強く抗い、しばらくすると観念したようにおとなしくなる。
その繰り返しだ。
それはあたかも海中で出会った美しい魚を陸に連れ帰ろうとし、抵抗されているような
そんな感覚に陥ってしまう。
肌の感覚に反応し喘ぐ唇はまるで、海水を求め開閉しているようにさえ見える。
そのしなやかで弾力のある美しい肢体は、ひんやりとし鱗の無い深海の生きもののような光沢があり、全身から粘液が出ているのではないか、とすら思わせる。
彼女に始めて会ったのはあの海岸。
どうしようも無く苦しくなった時、思い出したように訪れる。
自分にとっては原点のような存在である場所。
その海岸は砂浜では無く、小石が敷き詰められている。
濁らない青い波が、白い泡のような波頭とのコントラストを際立たせている。
打ち寄せては返す波に石同士がぶつかり合い、波が引く時にはコロコロという音がする。
それはまるで囁きあっているような、笑いさざめいているような、来るたびに違った声を
聴かせてくれる。
そう、僕はいつも石達と会話する為にここへ訪れるのだ。
喧噪に包まれたシーズンが終わった静かなこの海岸に、今日も疲れ果てた心と体を引きずってやって来た。
波打ち際に腰を下ろし、境目のわからない青い空と海をただ眺め続け、そして石達の
声を聴いている。
少しうたた寝をしていたのだろうか。ふと自分しかいないと思っていた波打ち際に、
人の気配がした。
----------つづく
「なによ、ここで終わり?エンジュにしては際どい表現ねぇ、、って思ってたのに・・・」
エレミは不服そうだ。
「気が向いたらまた書くわよ。でも度が過ぎるとレッドカードになっちゃうでしょ。」