気象系の青さんの素人妄想BL小説です
side S
夏休みの夕刻時間_
生徒会や部活目的に通う生徒も
普段の規律ある空気感とは違い
帰宅時は規則や風紀の事など
気にする者は少ない
制服を着崩したり
整髪料や香り立つ何かを身に纏い
下校する生徒達で賑わっている
そんな中にいても引けを取ることなく
すれ違う全ての生徒達を始め
先生方までもが…
一際、色香を放つ…
俺の背後へ視線を寄越しているのは
明らかだった
何故なら……
「……お先に失礼します」
先生[……///]
会釈はされたものの
視線は俺の背後に向いていて
会話は無し…
「おう!気をつけて帰れよ…」
生徒[…おー///]
生徒[…えぇ〜誰ぇ〜綺麗な子///]
何も難しい話を持ちかけてるのではなく
ただ教師として当たり前の挨拶を
誰に対しても同様に
声掛けしているだけなのに……
今日に限っては
まともな返事が届くことはなかったんだ
その代わり……
『……さようなら…//』
[……ぁ///……サヨナラ///]
[えぇ?誰!?……あんな子居たッ!?]
『……お疲れ様です…//』
[え?///……あ、お疲れ様/////]
[…/////]
[…可愛い///]
見事なまでに全員が
俺からの呼びかけではなく
背後で笑顔でも振り撒いてるであろう
智へ視線を送り
中には頬を紅く染めている者もいる
なんだ……
…この感じ…//
「…なぁ…//……お前ウィッグは?」
『…ウィッグ?……ありますけど?』
「はぁああぁ…//
あるかどうかではなく
してるのかを聞いてるんだッ!!」
『…ふぇ?……してませんよ?
もう翔先生ぇに正体バラしましたし…
…必要ないでしょう?』
キィィッ //
『…っと!?……翔さん?///』
それまで車椅子を引くのは
背後にいる智へ任せっきりだったが
ブレーキに手をかけ
強制的に進行を止めた……
「…………ろッ…」
『…え?……翔先生ぇ?
何か言いま…』
「頼むからッ
ウィッグを付けてくれッ!
お前のこと……
皆んなイヤラしい目で見てるだろ!!
そんな目で見られて…
嫌じゃないのか!?
正直、気が気じゃねぇ〜し……
そんな奴らを見る俺の身にもなれよッ…//」
『……………へ?…///』
子供じみたことを言っているのは
これでも理解している……
それに…
コイツが教え子と分かった今
正々堂々と俺はこいつの恋人だって
言う資格が無いことだって分かってる
でもコイツ…//
いくら俺を騙す為だったとはいえ
ウィッグで顔を覆わないと
そこに居るだけで人を魅了するってこと
気がついてないよな?
それなのに…//
自ら愛想振り撒いたりして……
もっと自分の魅力
自覚しろよな……//…
「…おい…//…
ちゃんと聞いてるのか?///………智?」
車椅子の動きが止まったまま
返事も無いことが気になり……
肘置きを握る手に力を入れて
身体を捻り様子を伺った
「……ゔぅ⁈………何だよその顔ッ///」
『…ふふふ……すみません♪
だって翔さんが嫉妬してくれるの…
素直に嬉しくて………あはははッ/////』
本当に嬉しくて照れているのだろう
口元を隠すように手の甲をあてがえ
可愛い笑顔で頬を染める様子に
見惚れつつ……
“ 嫉妬 ” …と、全てを見透かして
ハッキリと言い切った智に……
大人気ない事を告げた己が
どうしようもなく恥ずかしく
居た堪れなくなってきた
「ゔぅッ/////
そッ…そんな可愛いこと言っても
ダメだからなッ///
……分かったら、さっさと…」
『ウィッグはしません♡
それとこれとは別の話です♪』
「……は?///……なッ…なんで…//」
『翔さんへ全てを話す時は、
嘘偽りのない僕でありたいと…
そう、思っているからです!
それに…そんな変な目で見る人なんて…
どこにもいませんよ…気にしすぎです!』
「…でッ…でもッ!//」
『諦めて下さい♪』
ふわぁ…
ぎゅぅぅッ♡
「ちょッ!?……おいッ!?
ここ、まだ…通学路ッ///」
会話が止まったと思った次の瞬間には
車椅子を挟んで肩から背中へかけて
よく知る香りと共に
熱いぬくもりが降ってきた
『それでも…僕のこと……
そんな目で見られるのが嫌なら…
ふらふらと離れて行かないように
翔さんがしっかりと愛して下さい♡』
ふにぃ…
ちゅッ♡
「……は⁈/////」
抱きしめられていたかと思えば
殺し文句に加え
頬に唇を押し当ててきてるし…
人が見当たらないからいいものの……
こいつッ……
公道だって
分かってるのかッ!?
小悪魔にも程があるだろ///
『ふふふ♪ 安心してください♡
僕は翔先生ぇから離れません…
いっぱい愛してくれるこの手も…///
手離すつもり有りませんから♡
……何度でもいいますよ?
嫉妬なんかしてる暇あるなら
これからも僕を愛して下さい///』
ぎゅぅぅッ…
「…………智…/////」
まだまだ蒸し暑さの残る中で
本来ならちょっと触れるだけで
不快感は増す筈なのに…
背中越しに伝わるコイツの熱は
どうしてこうも
俺を心地よく癒してくれるのだろう
強く絡み直した手だって同じだ
互いの汗でじっとり湿っているのに
ベッドの上で交わす二人の情事みたいに
もっともっと…………と…///…
たったこれ位の事で…
肌の触れ合う感覚を
このまま更に深めたいと望む
己が出現するんだから……
俺は相当重症のようだ……
それでもここは公道
いつ人が通るかも分からない……//
「智ッ///……悪いがそろそろ…//…」
ぼそッ…
『…………翔さんを信じてます…』
「…………え?……なに?///」
もう一度、振り返り
視線を交わした時には……
それまでのただただ可愛く
甘い色香を放っていた智ではなく
『………どんな僕でも…
先生ぇなら嫌わないでいてくれるって…
…信じてます//』
どこか哀しげな…
そんな力の無い笑顔を見せてきたから…
「当たり前だろ…
…俺だってそう思ってるよ//」
この時、交わした会話を最後に…
目的地周辺に着くまで
互いに何か言葉を発することは無かった
そして……
甘くもどこか遠くを見つめる瞳を
横目でチラチラと見つめながら
バスで移動すること約1時間_
どこか見覚えのある街まで辿り着き
智とバスの運転手の方に介助してもらい
バスを降りた
「………なぁ……ここって…//」
『……………懐かしいですか?』
「………え?…//」
今、何て言った…!?
智は2人分の荷物を整え
背後に回り車椅子を押し始めると共に
会話の続きを再開した……
『ここは流石に覚えてますか?
翔さんの……いえ…//
中学校の教員だった翔先生ぇの…
思い出の地……でしょう?』
「……え?///……どうしてそれを!?」
どういうことだ⁈
現在の高校の事は伝えていた
そもそも生徒だったしな……
けれど中学の教師をやってた事は
伝えてなかったはず……
なんで知ってるんだ!?
『……暗くなる前に行きましょう
大丈夫ですよ!
全てお話しますから……』
「……あ、ああ……?//」
智が何を考えているのか
全く理解出来ない……
けれど…
数年前まで毎日通っていて
大半が当時のまま
懐かしい記憶が蘇るこの景色に
あの当時、若さ故に…
何事にも自信に満ちていて
曇りの無い自分を思い出したのか
少し胸が熱くなった……
「……なぁ…なんで知ってる?」
『……………あの頃は…//
本当に無知で……たかだか13歳が…
恋愛ゴトに首を突っ込むのは…
まだ早すぎました…//…』
「………」
質問への回答ではなく
智が言う… “ 13歳 ” とは……
つまり3年前のことか?
俺が車椅子ユーザーへ変わった頃の話が
背中から静かに聞こえ始めた……
「………あ、おいッ!
俺の中学なら
こっち曲がった方が近いぞ?」
『……今から向かう場所は…
そちらではないので……//』
「………?…」
勤めていた中学へ行くのかと思いきや
向かって行くのは反対側……
暫く進むと…
たまに仕事帰りに利用していた
公園の前までやってきた
そして迷わず園内へ進み始めると
再び、背中から話が再開された……
『……僕が……初めて素敵だなと、
目で追う様になった人は……
同じ中学の2年上の男の先輩でした
……憧れてました…//
くしゃくしゃの笑顔で大ちゃんって
廊下や食堂ですれ違う度に
笑いかけてもらって……それだけで…
その日一日が幸せだったんです』
「………好き……だったのか?」
『………いえ…//
好きだと勘違いしていました
でもある日、突然……
先輩から付き合おうって言われました
…嬉しかったです//
憧れの先輩にそんなこと言われて…
…キスされて……//』
「おいおいッ…
付き合ったその日にか!?
…かぁ〜ッ!過ぎたこととはいえ…
中学生のくせにませてんなぁ〜…//」
13歳って言ったら…
今よりもっとガキじゃんか…//…
でも智の事だ……
今と比べ色香は少なかったにせよ…
初心で可愛かったんだろうな/////
『………』
「……あ、悪りぃ…//…
話遮った……ごめん続けて?」
『……先程も言いましたが…
僕には背伸びした付き合いでした
2年上の先輩って…
正直、何考えてるか分からないですし
人と付き合った事がないので…
先輩の言うことが全てだったんです』
「………」
『……今思えば…全て納得がいきます…
先輩は……僕を性の吐け口として…
…利用していたんです』
「……は!?……なんだそれッ…//
何でそんな奴と付き合ったんだよッ!」
突然、何を言い出すかと思えば……
穏やかでない話に
一瞬で苛つく気持ちが込み上げてきた…
『好きと勘違いしてたから…
…それに、そういう行為がなければ
先輩は優しかったんですッ!
憧れの先輩でしたし…//』
「……そんな…//…その言い方だと…
そういう行為の時は…
優しくないってことだろ!?
無理矢理だったのか…!?
ちゃんとお前の気持ちは伝えたのか?」
『………僕の意見は必要ないんです…
最後にハッキリ目の前で言われました
僕は先輩にとって…
都合のいい玩具だったんだと…//』
「何だよそれッ!!
最悪じゃないか……
智、お前は玩具じゃないッ!
お前は誰の代わりにもならないし
誰もお前の代わりにはなれないッ!!」
2年上の先輩って…
相手も学生だろッ!?
そんなクズのような奴に
智は利用されてたのか!?
まだ話しを全て聞き終えてもいないのに
苛立ちが止まらず声を荒げてしまった
『…ありがとうございます/////
その言葉だけで救われます///
……でも、先輩は違ったんです…
その内…先輩からはキスから先の行為を
要求されるようになりました…
僕はそれが苦痛でした……//
でも、それを拒否することは…
許されなかったんです…言ったでしょ?
僕は先輩の玩具で…絶対だったから…
最終的には断れず応じてきました…//』
「………なんッ…で……//」
『僕が頑張ったら…
先輩も変わってくれると
信じたかったのかもしれません
…でも…結局は苦痛でした……
それである日、気付いたんです…
僕は先輩に憧れていただけで
この感情に好きが無いってことを…
だから別れて欲しいと告げました…』
「…………別れたのか?…//」
『条件を告げられました…
…僕の身体で…
先輩のを抜くの…手伝えって…//』
ダンッ ///
「はぁああッ⁉︎
何だょそれッ…//
お前ッ…//…
まさか応じてないよなッ⁈
…ってかッ…そいつクズだなッ//」
いくら中学生のガキがやった
誤ちだからって……
許せることと、
許しちゃならないことがあるだろッ……
智は優しすぎるから……
いいように利用されたってのか⁈
汚れのない心を利用するなんて……
絶対に…
あってはならないことだろッ!!!
「あぁああ!!
くっそッ!//」
ダンッ ///
いくら過去の話とはいえ
何にも助けてやれなかった自分が
情けなくて……悔しくて………
何度も何度も…
車椅子の肘置きを拳で叩きつけた
『……ふふふ///
その時から先生ぇに出逢えてたら…
僕たちの未来は
少し違っていたのかもしれませんね…
…断りました
ちゃんと謝って出来ない事も伝えて…
そのまま別れてもらうつもりでした
……でも…//
先輩は応じてくれなかったんです…
してもいない約束を果たせって……』
「智!悪いッ‼︎
ここまで聞いて申し訳ないが……
そこから先は話すなッ!!
そんな…煮えくり返るような話し…
聞きてしまったら……
そいつのことぶん殴りに行かなきゃ
気が済まなくなっちまうッ……
それにッ//そんな辛い時の話し…
お前も辛いだろ!?
話したら俺が嫌うとでも思ったのか!?
どんな事があっても…
お前を嫌いになんて
なれるわけがないんだッ‼︎
そんな心配必要ないから…
…わざわざ辛い過去のことなんて…//
無理に話さなくていいんだぞ?//」
キキィィィ……
「………?……智?……どうし」
『……翔さんには
聞く権利があるんです…
…ねぇ……翔先生ぇ?
まだ、僕のこと思い出せませんか?//』
「……えッ!?…」
細い腕を真っ直ぐ伸ばし
綺麗な人差し指がある場所を示した……
それは…公園内に、
数ヶ所常設されている公衆トイレ
智からそう言われ
よくよく考えてみれば………
「……あれ?…この場所って…以前に…//」
今も時折り思い出す……
数年前の少し曖昧だった記憶が
一気に脳内で甦り始めた……
『……思い出しましたか?
あの日は月の無い日でした…
先生ぇは軽く酔っていらして……
ふふふ……遊ぶ相手が居ないかと
誰かと電話をしていました
…恐らく、その時に声を聴いて……
駆けつけてくれたのでしょう?
トイレ裏で騒いでる学生達を宥めに…』
待てよ……
なんで…そんなこと……//…
そんな言い方されたらさ……
それって……//…
!?
「………ッ⁈……ハァッ…まさかッ…//…ハァ…
…まさか智…ハァッ…お前ッ//…」
『………思い出して頂けましたか?
襲われかけてた時に
翔先生ぇに助けてもらったのは……
他の誰でもない……僕なんです…』
「……ハァッ……嘘、だよな?…ハァッハァッ…」
忘れもしない当時の記憶__
ただ、その後に起きた衝撃的な事で
途切れ途切れとなっていた記憶が
智の言葉によって
パズルのピースが全て揃った様に
記憶の破片を繋いでゆく……
あの時……
怯える目と消え入りそうな声で…
俺に助けを求めた少年の記憶__
怯えながらも、俺を信じてくれた……
悲しくも可愛いく泣く声を
胸に抱き留めた記憶_
背負って連れ帰った時の
あの……
足腰へ感じた懐かしい重み……
それまでの事を全て取り払ったような
屈託のない可愛い笑顔に……
芽生えてはならない感情を、
顔を背け、足早に去ることでしか
誤魔化すことが出来なかった
あの……
初めて感じた胸の高鳴りを………
『……先生ぇは僕に
ジャージとコートを貸してくれて、
おぶって家まで送り届けてくれたね///
…防犯ブザー持ち歩いてますよ?
……またなって……手を振って…
帰っていかれましたよね?///』
「………まさかッ…//…
なら、智ッ…//…お前…全てを知って…」
『……あの時、
翔先生ぇが助けたのは
間違いなく僕で…//
僕は借りたコートのポケットにあった
この手帳を返そうと……
先生ぇの後を追いました///
でも……そこで見て聞こえたのは…
ものすごい大きな衝撃音と人集り、
そして…意味深な怪しい笑みを浮かべ
その場を走り去った先輩……』
目の前に差し出された
見覚えのある手帳を受け取り
中を開けば……
間違いなく俺の字で書き記した
文字の数々に……
忘れたくなかったのに……
記憶が途切れ途切れとなり
そのまま時が経過していくにつれ
再会を諦めていた可愛い笑顔が
既に再会を果たし
俺の直ぐ手の届く距離に
恋人として存在してくれている事実に…
そして………
「……待てッ!!…お前…今…
追いかけて来たって……言ったか!?
と言うことは……あの場に……
居たのか⁉︎//
アイツと話したのか!?
…何か…されたんじゃッ…//…
無事だったのか!?//」
『言ったでしょ?
先輩は僕が近づくと走り去りました
それからは……何度か声をかけられましたが、
避けて…そのうち卒業して……そのまま…//…
…だから…//
確証はなかったんです!
でも、その言い方ですと……
やはりあそこで倒れていたのは
…翔先生ぇだったんですね?//
そして…僕を送り届けたばっかりに……
……翔さんの脚は……//…
取り返しのつかない事になってしまって…』
震えているのは2人とも同じ……
智から紡がれる言葉の数々と
俺の当時の記憶が綺麗に交わり繋がった
でも、それによって……
智が再び俺の前に現れたのが……
今も手と手を合わせ……
許されない関係でありながらも
恋人として居てくれる理由の
根本的なところにあるのが……
“ 償い ” からくるものであるならば……
「………やめろ…//………それ以上は……」
『本当にごめんなさいッ!!!』
こんなにも綺麗な存在を
俺の脚のせいで繋ぎ止めてしまってる
この事実に……
これからどう…
向き合っていくべきなのだろうか……
つづく・‥…─*
更新遅くてすみません(>人<;)
2人の複雑な心情を描くのに格闘しておりました。
あと眠気…♡笑
本当ならもっと補足したいのに…
やっぱり文字数が…笑
そしてもうとっくに短編を通り越して…
中編?…もしかしたら……長ぎゃッ⁈∑(゚Д゚)
短く纏められない力量の無さに……
スミマセン…(∩´﹏`∩);:
お山の頂上前の長い谷部分…も少し続きます(>_<)
La mimosa