日尾昌之 masayuki hio

日尾昌之 masayuki hio

週休4日のアウトサイダー



月刊シナリオ1969年12月号の特集は山田洋次、森崎東の研究でした。巻頭は映画評論家の田山力哉さんの「日本的喜劇の新しい図式」。その中で私にとって興味深い文章を見つけました。

 

野村芳太郎と多賀祥介が共同で書いたシナリオ「拝啓天皇陛下様」は、松竹大船喜劇の伝統をぶっ飛ばすぐれたものであり、事実、渥美清主演で野村の監督による出来上った映画も、実に鮮かな印象を我々に残す斬新なものであった。この作品を、きっかけとして、それ以降の一連の新しい松竹喜劇のスタイルが生まれたことは間違いない。

中略

今では松竹コメディの旗手となった山田洋次も、もともとは野村芳太郎に師事していた人でもある。

中略

野村から山田へと言う流れによって、今や松竹は新しいジャンルを打ちだしつつあるが、こう言う喜劇の動きと言うものは、他の会社には全く存在しないものなのだ。

山田洋次の最近の作品「男はつらいよ」は、彼自身が森崎東と共同でシナリオを書いたものであり、、山田としても、代表作となるだろう。奇しくも、「拝啓天皇陛下様」以来の渥美清が主演した・・・

 

「拝啓天皇陛下様」の製作を担当したのは私の父です。引き続き父が製作した「続・天皇陛下様」では、山田洋次さんと森崎東さんが共同でシナリオを書いておられます。また、これより、3年後の同じく父が製作した野村監督、岩下志麻さん主演の「女の一生」でも、脚色を、山田さん、森崎さんが担当されています。松竹、いや、日本を代表する喜劇映画「男はつらいよ」、その監督で、今や日本を代表する映画監督の山田洋次さん、そして、主演の渥美清さんの原点は、この「拝啓天皇陛下様」であり、その後の父が製作した作品と知ってとても誇らしい気持ちになりました。

当時、松竹の喜劇は、映画のみならず、舞台でも松竹新喜劇、大阪道頓堀角座の演芸が隆盛を博していました。今、一度、新しい松竹喜劇を見てみたものです。