ウオールストリートジャーナルが7日、中東情勢に伴う新興国のインフレ対策に触れ、その危険性を指摘した。

確かに1~2ヶ月であれば得した気分で済むが半年1年となれば補助金や価格統制が当たり前の感覚となり、


解除された後の変化に対応するのは非常に苦痛を伴うだろうし容認できないだろう。ましてや差額補助でもな

ければ生産者や小売業者の努力や意欲をそぐ形となり経済の奇形化が進むはず。共産化の失敗もここにあ


ったはずで、まさに反対の処方といえる。それが判った上でのこうした処置は中東混乱の1因が食料や燃料の高騰にあることに新興国が危機感をもった結果だが、中東情勢の不安定化が長期化すれば後遺症の病状は

悪化、アジア経済に暗雲が広がっている。


ウオールストリート 転載



【シンガポール】食料など生活必需品の価格が上昇する中で、アジアなど新興国で補助金や価格統制など短期的な消費者保護策を取る政府が増えている。多くのエコノミストはこれは逆効果で、最終的にインフレの悪化を招くと懸念している。

 インドは2月28日、ディーゼル燃料と調理用燃料への補助金支給を延長した。今後数週間中には追加的な食料補助金も支払われるとみられる。今年のインフレ率が政府見通しの4.5%に近づいている香港の当局は先週、公営住宅の家賃を2カ月免除するとともに、居住者には電気使用料の補助をするとし、また、高齢者に6000香港ドル(6万3000円)の現金を支給すると発表した。

 シンガポールでは、1月のインフレが5.5%に達したのを受けて、中小企業への税金払い戻しと現金給付が行われている。同月のインフレが7%になったインドネシアは燃料への補助金を3月に廃止する予定だったが、今はその延期を検討している。

 これらの動きに先立って中国では、当局が昨年11月に地方政府に対して、物価上昇に対して補助金を与えるか価格統制を行うよう指示している。

 こうした政策は、インフレの悪化を一時的に防ぐことができるため各国政府には人気がある。また各国は、食料品価格の高騰が中東・北アフリカでの騒乱を招いたことを肝に銘じている。

 タイのチャティガワニット財務相はEメールで、「アジアのほとんどの国はすべてを市場メカニズムに任せるようなぜいたくはできない。貧困者には既にゆとりがないのだ」と述べた。同国は最近、貧困層に対する電力、鉄道・バスの無料化政策を6月まで延長することを決めた。

 こうした措置は持続不可能な歳出拡大を意味するものの、いくつかの中東諸国もアジアと同様の動きをみせている。ヨルダンは燃料補助金を引き上げた。これを受けて格付け会社は格付け引き下げを警告した。アルジェリアも食料品価格の統制を導入し、モロッコは「どのような犠牲を払っても」食品価格を手の届く範囲に収めると約束した。

 補助金や現金給付によって政府は大幅な金利引き上げなど、もっと痛みを伴う措置を回避することになる。多くの政府は、利上げによって経済成長が鈍化し、経済を不安定にする恐れのある投機資金が流入すると警戒している。

 しかし長期的に見れば、補助金などの措置は消費者の支出を促すことから諸物価をさらに押し上げることになる、とエコノミストらは警告する。一方で価格統制は農家や製造業者のやる気を失わせ、価格下落に必要な食料とモノの増産が行われなくなり、さらに新たなゆがみを生み出す。

 HSBCのエコノミスト、フレデリック・ノイマン氏は「アジア各国の政府は問題を先送りしているだけだ。補助金と価格統制は長期的には逆効果なのだから」と述べた。こうした措置はカネもかかる。シンガポールはこれらの措置の費用が66億シンガポールドル(約4200億円)になると予想している。ただ、アジアの多くの国は現在、財政黒字であるため、ほとんど問題はないかもしれない。

 一方、補助金や価格統制の打ち切りが社会不安を引き起こす可能性もある。1990年代後半にインドネシアのスハルト政権を倒したのはこうした動きだった。また2007年のミャンマーの反政府運動の原因にもなった。ボリビア政府は最近、全国の交通機関からストを行うと圧力を受け、燃料補助金の廃止を撤回した。

 ベネズエラでは昨年の物価上昇は27%にのぼった。同国が実施した食品から交通機関まで複雑な補助金の網は、補助金政策の複雑さを浮き彫りにした。補助を受けた市場では長蛇の列が出来たほか、価格統制によって牛乳などが周期的に不足した。

 対照的に、ブラジルは食品の供給を増やすことでインフレと戦っている。同国では、牛肉などの生産業者が経済成長に伴って増える需要に追いつけるように優遇ローンを提供している。こうしたインフレ対策は長期的には有効だとするエコノミストも多い。

 ただ補助金を打ち切らざるをえない国も出てきている。2月の物価上昇が前年同月比12%となったベトナムでは補助金の財政への負担が大きすぎるとして燃料を24%値上げすることを決めた。中国は過去4カ月に3度、燃料を値上げしている。