心象画 | 絵と手と言葉 ♪ にじいろななこ

絵と手と言葉 ♪ にじいろななこ

絵しごと、手しごと、日常のあれこれ、スピリチュアルなど、わたしのハートを言葉にのせて…。

『注文の多い料理店 序』宮沢賢治

 わたしたちは、氷砂糖をほしいくらゐもたないでも、きれいにすきとほつた風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。
 またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、いちばんすばらしいびろうどや羅紗や、宝石いりのきものに、かはつてゐるのをたびたび見ました。
 わたくしは、さういふきれいなたべものやきものをすきです。
 これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹や月あかりからもらつてきたのです。
 ほんたうに、かしはばやしの青い夕方を、ひとりで通りかかつたり、十一月の山の風のなかに、ふるへながら立つたりしますと、もうどうしてもこんな気がしてしかたないのです。ほんたうにもう、どうしてもこんなことがあるやうでしかたないといふことを、わたくしはそのとほり書いたまでです。
 ですから、これらのなかには、あなたのためになるところもあるでせうし、ただそれつきりのところもあるでせうが、わたくしには、そのみわけがよくつきません。なんのことだか、わけのわからないところもあるでせうが、そんなところは、わたくしにもまた、わけがわからないのです。
 けれども、わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまひ、あなたのすきとほつたほんたうのたべものになることを、どんなにねがふかわかりません。
 大正十二年十二月二十日
               宮沢賢治





自らの作品を『心象スケッチ』と名付けた宮沢賢治。
わたしも、あなたを観て、話しているうちに、どうしてもそんな気がしてならないと感じる光景を、その通りに描いているまでです。
そして、描くことでわたし自身が癒され気付きを得るように、わたしの描いた絵があなたのハートの糧になるなら、これほど幸せなことはありません。

今まで描いた皆様と、これから描く皆様へ、心からの感謝と愛を込めて…。