愛しき薫りを求め (動きだす時) 7 | シンイ二次小説でんべのブログ

シンイ二次小説でんべのブログ

シンイ二次小説を書いています


「どうしたのかしら・・・王様
王宮には医員はいるんですよね?」

「診療棟を設けておる、そこに
医官は常勤させておるが…内官
様子を見て参れ」

「はい、王様」


すっと姿を消した内官が
血相を変え戻ってくる。

「王様!大変でございます、崔沆殿が
血まみれで診療棟に運ばれております
あの様子では、すでに手遅れかと」

「え!血まみれ?案内して!」

大きな瞳をより大きく見開き
ウンスは席を立ち上がる

『・・・はぁ~、俺が隠して
おるものを・・・仕方あるまい』

そんな事を胸に秘め、ヨンは王様に
一礼すると、ウンスの手を取り
診療棟へ向かう。

チュホンも厩舎へ戻り
蹴りあげられ泡を吹いて倒れていた
武官も牢に連れていかれ
廊下に転がっていた無数の亡骸も
始末されもとの静けさを
取り戻していた。


内官に案ないされ診療棟に到着すると
診察台の上に崔沆が横たわり
その回りをたくさんの医員が取り囲み
ヨモギであろうか傷口にあてがい
止血している医員の姿も見える。

「見せて!確かにヨモギは
小さい擦り傷程度なら効果はあるわ
でもこれは刀傷でしょう?無理!
退いて!」

「あ、貴女は誰?」

「医員よ!!」

「女人の医員など今まで聴いたことも
ないですが・・・」

「つべこべ言ってる暇はないの
はやく手当てしないと死んじゃうわよ
それでもいいの!」

医員が後退りするとウンスは薬草
剥がし刀傷を確かめる
そしてヨンに向き合う。

「ヨン?邸の桃色の風呂敷包みを
持ってきてほしい、一刻もはやく」

「相分かった、すぐに戻るゆえ」

そう言ってヨンは軽功を身に纏い
瞬時に駆け出す。
王宮と邸は、それほど離れてはおらず
じきに風呂敷包みを抱え戻ってくる。

「これでよいか?」

「ええ…これでいいわ ヨン
手を貸してほしいの…王妃様の首を
縫った時の事を覚えてる?
誰も知らないしお願い」

「むろん」

「良かった…いいですか!
お湯を大量に沸かして
ください、清潔な布もたくさん
用事してください。そしてこの診療台
の周りに天幕を張ってください
それから薬医員の方いるかしら?」

「は、はい…」

恐る恐る一歩前へ踏み出たおのこに
ウンスは、チャン先生に教えて
もらった薬草を口にする。

「オキナグサやシランあるかしら」

薬医員がこくりと頷く。

「良かった、すぐに煎じてくれる
熱が出ると思うから、これから
崔沆さんのお腹を開き内臓や血管の
損傷を確かめる手術をおこないます」

「「・・・」」

医員の間に暫し沈黙が流れる
人の腹を裂き生きてる訳がない。
誰もがそう思ったに違いない
されどふと目を向ければ
息も絶え絶えで苦痛に顔を歪める
崔沆が横たわっているのだ。

「貴方達!一刻の猶予もないの!
はやくして!患者が死んでもいいの?」

ウンスが声を張り上げるが
一向に動こうとしない医員ら。
その不甲斐ない様にヨンは
「ちっ」っと舌打ちすると己の衣を
脱ぎ出し上半身をさらけ出す。

「論より証拠なのであろう
この傷は、この方に医術を施して
頂いた後、俺も腹を裂き
こうして生きておる。分かったなら
さっさと動かぬか!」

あのときの傷である。
一年ほどしか過ぎていないが
傷口は、しっかりと塞がり
こんもりと肉が盛り上がっていた。
それをしげしげと眺めていた医員や
薬医員は、ヨンの大声で我に反ると
ばたばたと支度に取りかかる。

天幕が張り巡らされ
ウンスの道具も煮沸消毒され
運ばれる。
清潔な衣にヨンとウンスは着替え
口元を覆う。

「麻酔と言う患者に眠ってもらう薬は
ありません、相当な痛みを伴います
から、どなたか両手両足を押さえて
ください、こちらの責任者の方
おられますか?」

「はい…侍医を仰せつかる
オ・イマンと申します」

ヨンとウンスは顔を見合せ
侍医の顔をまじまじと見つめる。
年の頃は四十代であろうか
何処と無くテマンに似てなくもない
つんつん頭の髪を伸ばし
くくればこんな感じになるのではと。
切れ長の目付きもしかり・・・
何らかの事情で、家名が没落し
月日が流れテマンがいるのでは
ないか。

そんな事を思いながらヨンは
戻りし折、族譜を探らせてみようと
胸に秘める。

「これを噛んでくださいね」

ウンスは清潔な布を崔沆の口に
噛ませる。「始めます」っと
ウンスは髪をひとつにくくり
患者と向き合う。

「ぐっ」っと曇った声をはき
崔沆は歯を食い縛る
生身の肌に麻酔もせず
メスが入るのだ、相当な痛みが伴う
はず…両手足を押さえられ
崔沆は激痛に顔を歪めるのが
精一杯であった。
ウンスの望む道具をヨンは
的確に手渡し、時には汗を拭き
看護士の役目をきっちりこなして
いる。回りの医員は食い入るように
見たこともない医術の虜になっていた

『ちっ!・・・』

そんな姿に
ヨンは腹の底で
毒を吐いていたのである。


ポチっとして下されば嬉しいです





にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
にほんブログ村