木春菊  [偕老同穴] 58 | シンイ二次小説でんべのブログ

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「ゴックン」とウンスの喉が鳴った

「あれ・・・飲み込んでしまった
・・・今の奥さんの声よね・・」

「旦那様~はあはあ・・高熱を
出したと、使用人から知らせが入り
飛んで参りました、旦那様のご様子は
どうなんです?医仙様」

「外に出てしまい風邪を引いて
熱が下がらないんです、私ら医員の
落ち度です、すみませんでした
奥方様!髪を縛りいつものように
天幕の中へお入り下さい、お話が
有ります、急いで」

天幕の外と内で会話を済ませ
奥方は急ぎ支度をし天幕へと入る

「え!?わたくしがでございますか」

ウンスは煎じ薬を口移しで飲ませて
やってほしいと奥方にお願いしていた

「医員として私がやって差し上げても
構わないのですが、やはり奥方様の
愛情には敵いませんので奥方の方がより
煎じ薬の効能がでるかも知れません
お願いします」

ウンスはしれっと言ってのけた

奥方は暫し黙り込む・・・
だがカン・ヨンジュの苦しそうな
息使いを目の当たりにすると
意を決し顔を上げる、その顔は
少しの迷いもないようにウンスを
見据えていた

「やります、煎じ薬をこちらへ」

ウンスは器を渡すと奥方は口に含み
静かに顔を近づけ、煎じ薬を
カン・ヨンジュに含ませると
ごくりと喉が動くのがウンスにも
分かった

すべて飲み干すのをしかと確かめると
奥方は恥ずかしそうに俯いていた

「これで、熱が下がってくれる筈です
典医寺の薬員はとても優秀ですから
ありがとうございます、熱が下がれば
お知らせ致します、どうぞ長卓の方
へ」

奥方が煎じ薬を無事に飲ませてくれた事に
ウンスは胸の内で安堵のため息を
溢しているのが、自分でも気付いていた
ウンスに促され奥方は天幕を後にする

じっとカン・ヨンジュを見つめていると
後ろから痛いほど感じる視線に
ウンスは振り返る

「どうしました?ホン医員
何か有りましたか」

ホン医員は、睨み付けるような鋭い
眼差しを残し無言で天幕を出て行く

「まったく、何よ!言いたい事は
口に出さないと分からないから・・・」



一方兵舎では

チュンソクとトクマンは眉間に皺を
深く刻み何か話し込んでいた

「奥方様を足蹴にするなど、俺がこの
首を差し出す覚悟で斬り捨てます」

「バシッ」とチュンソクの張り手が
トクマンの後頭部に炸裂する

「そのようなこと、大護軍が喜ぶ筈が
なかろう、少しは考えろ!いつまでも
それだから隊長にはなれぬのだ
隊長兼務の護軍では俺の身が持たぬ
まったく・・・」

「た、叩かなくても・・・」

トクマンは後頭部を押さえ涙目で
チュンソクに訴えている

「でも悔しいですよ・・」

「大護軍が何かをお考えの筈
お前が騒がづとも良い」


兵舎の私室でヨンは腕を組みながら
窓辺に佇んでいた

『ウンスを足蹴にするなど、ぺ・ユン
決して許さぬ!』


「大護軍、王様がお呼びとのことです」

扉の向こうから
チュンソクの声が聞こえてくる

「相分かった、すぐ参る」

「某も共に参れとの事でしたので
お供致します」

ヨンとチュンソクは共に
宣仁殿へと向かう

「王様、大護軍と護軍が参っておりま
す」

「入って貰いなさい」

中に脚を踏み入れると、王妃様と
その隣には無論チェ尚宮、そしてウンス
が畏まって座っていた

「・・・王様」

王様は座るように
ヨンに向け手で椅子を差す
ヨンの椅子の隣にはぺ・ユンが
頭を垂れ座っていた

「昨日、余も王妃も不在の折り
ぺ・ユン、そなたはどうしていた!
典医寺に出向き、医仙を足蹴にしたと
報を受けたが、何ゆえそのような事に
及んだのか申してみよ」

王様、王妃様はぺ・ユンから視線を
外さずじっと見つめていた
ヨンは真横に座るぺ・ユンをちらりと
見ると鬼剣を握る手に力を込める

「行く手を阻むような仕草をしたゆえ
少し、ほんに少し脚をはらったまで
でして、他意はなく邪魔の意味で・・」

ぺ・ユンはぶつぶつと独り言でも呟く
ように、か細い声で話をしていた

「政に口を出すつもりなど妾は毛頭ない
義姉様の事を蔑ろにする者、ましてや
か弱き女人を足蹴にするなど、妾は
断じて許さぬ!」

王妃様はらしくもなく怒りの感情を
露にし、語尾を強めぺ・ユンを
睨み付けていた

「そなたの起こした暴挙で、カン殿は
高熱に魘され生死の境をさ迷って
おられるとの事、ぺ・ユン!
カン殿に万が一あらばそなたの首
もらい受ける、さよう心得よ」

王様の言葉にぺ・ユンの顔が上がり
眼を見開いた

「王様、某が申し上げても」

王様は頷かれる

「王様、カン殿に万が一あらば
その役目、某にお任せを
許嫁を足蹴にされたのです
見過ごすなどあり得ぬ」

ヨンは語尾を強めぺ・ユンをぎろりと
睨み付け椅子から立ち上がった
今にも鬼剣の鞘を抜くのでは
ないかと思う形相で・・・

『俺はこの為に呼ばれたのか
大護軍をお止め出来るのは、どうみても
俺だけ・・・・』と、チュンソクは
ガックリ肩を落とすが、『大護軍
剣を抜いてはなりませぬ』
とも願っていた

「相分かった、大護軍に任せるとする
好きに致せ!」

「はっ!ありがたき幸せ」



重臣らが戻り、王様の私室まで
皆で向かう

「あの~王様、カンさんは熱も下がり
顔色も戻ってきましたけど・・・」

ウンスは事の子細が飲み込めず
小首を傾げ王様に向け言葉を掛けていた

「医仙殿、誠に申し訳ない
重臣らは余の配下である、その一人が
このような始末、余が至らぬ
せいであるゆえ・・・」

「王様、私は医員です
患者を守る為なら、鬼にもなります
でも・・王宮の秩序を考えたら
してはいけないことだったのかも
しれません、私にも非はありますから
どうぞお気になさらず、王妃様も・・
この通りテマン君のお陰でかすり傷
一つ出来てないですし・・ふふふ」

ウンスは王様と王妃様を
交互に見つめ口の端を上げ微笑んでいた

「まったく貴女ってお方は・・・
人が良いにもほどがあるゆえ」

それから王妃様とウンスは
それぞれ戻り私室には、王様とヨンの
二人だけになっていた

「大護軍、今スリバンに調べを
させておるが、ぺ・ユンあやつ
元と繋がりがあるようなのだ」

「徳興君様もおらぬ今、元のどなたと
・・・!」

ヨンは察しが付いたのか顔を上げ
王様を無言で見つめ、王様もまた
無言で頷かれていた


それから数日の内に、『王宮の医仙
不治の病をも治す神の手』の噂が開京中
に、広がったのであった


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