シンイ二次小説でんべのブログ

シンイ二次小説でんべのブログ

シンイ二次小説を書いています

「貴女は今、天界におられるのか?
俺のそばを三歩離れるなと
申してきたはず・・・なれど
親御殿の元ならば目を瞑りましょう
貴女が俺を残し逝ってしまわれ
飯もいらぬ、眠ることもできぬのだ。
なれどウンスならばこんな俺を
叱るのであろうな」


子を成しすでに手を離れ孫まで
いる年老いたヨン。
生涯武官の道を貫き
すでに隠居の身ではあるが
愛としいウンスが先に逝きさみしい
余生を送っていた。
第二夫人も側室や妾もそばに
おかず、一途にウンスを愛し
ともに過ごしていた。
夜な夜なウンスの薫りを求め
眠れぬ日々を過ごす。


「今宵も眠れぬ・・・はよう
お迎えに来てくださらぬか?
俺とてウンスが逝きはや三年
些か疲れた故もう良いであろう。
今宵は満月、あちらから
見ておるか?」


すでに日付が変わろとしていた刻限
縁側に腰掛け毎夜の如く
ウンスに問うが返答があるはずもなく
虚しく時が流れるだけであった。

死に場所を求め戦に明け暮れた
若い頃、幸か不幸か己を負かす
武人に出会う事は叶わず
負け知らずで武漢の人生だった。
時は流れ時代が変わり
お仕えしていた高麗王朝も滅亡し
李成桂により、朝鮮王朝となり
ヨンは斬首を免れたのであった。


ウンスが生前、若かりし頃の李成桂の
命を救い、李成桂と交わした
固い約束を守り、死の縁にいるときで
さえ、李成桂を呼びつけ念書を
認めさせる程の念の入れようであった。
愛しい人の最期を知るウンスにとっては
極刑だけ避けたかったに違いない。

しまいには満月がウンスに見える程
眼も霞み出していた。


「うん?俺は泣いておるのか?
雫が・・・」


ポツポツと顔に滴る雫。
ヨンは顔を上げ、ウンスが好きだと
言っていた雨露を頬に受ける。


「俺もウンスとともに風になり
天界へと参りとう存じ上げます
時の神!!お頼み申す」

ヨンは月に向かい頭を垂れる。


「ならば参ろかのぅ~~、そなたの
寿命もあと数日、早かれ遅かれ
時はくるのじゃ、今なら嫁御も
呼べるぞ。どうじゃ?フォーホッホッ」


目の前に突如姿を見せた時の神は
ヨンにそう問いかける。


「ウンスを呼んでくれぬか?
生のあるうちに抱きしめたいが
無理であろうか?」


「それは無理じゃな。
嫁御は風になり、自由気ままに
飛び回っておるようじゃ
呼んで見よう」


「◎◇◆○♡△▲▼▽えい!」


時の神は意味不明な暗号らしき
呪文を唱えると風がピタリと
止まり、ヨンの回りだけ
ぐるぐると回る小さな小さな
妖精らしき者が現れ
うふふっうふふっと楽しそうに
回っていた。


「ウンスなのだな?
忘れる筈のないウンスの花の薫りが
する。まるで赤子のようだが
大事ないのだな?」


「そなたも風となれば分かるぞ
この姿は嫁御のたっての希望なのじゃ
風となりすきな所へ行ける故
そうしたいとのぅ~、愛しい人は
そなたばかりではないのだぞ。
残してきた両親、友もいるように
相手には姿はみえども暖かい風を
与えておるようじゃ。
あっぱれじゃ、嫁御は」


「よく頑張りましたね。
一緒に行きましょう?
風はとっても気持ちが良いわよ」

小さな小さなウンスはヨンの耳元で
そう問いかけるとヨンは笑みを
ウンスの小さな手をそっと握る
すると驚いた事にウンスが
等身大のウンスに戻ってしまう。


「ウンス!!」


「あら?戻ってしまったわ。
風には戻れないのかしら?
時の神様?いや、エロ仙人様?」


「 エロ仙人はなかろう?
これでも時を操る神ぞ・・・多分?」


「あれ?自覚がおありかしら?
若くしてあちらの世に脚を踏み入れた
魂を追いかけ回していた癖に
ヨン!殴っても構わないわよ
で、ヨン?3ヶ月ぶりね
一人残してしまいごめんなさい。
今は私から触れる事はできないけど
同じ立場になれば思う存分かも
知れないわよ。うふふっうふふっ」


ウンスは笑みを浮かべヨンに
お願いしていた。
ともに風になりあちらこちらと
回り、旅をするもよし、熱い夜を
過ごすもよし、二人なら
寂しくはない筈とウンスは思ったに
違いない。

ヨンはヨンであと数日の寿命ならば
こうして迎えに来てくれた
時の神とウンスとともに風になるのも
悪くはない。愛しいウンスとともにならば
尚更なのだ。


「参る」


こうしてヨンの寿命も尽き
ウンスと二人小さな小さな妖精となり
天高くのぼり風となり
ラブラブも復活し
輪廻転生が叶うまで共に暮らしたに
違いない。


・・・・・

2019年7月7日未明
てんてんmamaさんが逝ってしまい
丸五年の月命日です。
早いものですね・・・。
末娘の画伯さんから
一報があり、突然の事で
言葉も出ませんでしたが
mamaさんの分まで
頑張ろうとおもい今に至ります。
仕事も復帰しなかなか更新できない中
でも新しいシンイファンの方や
昔からの読者様に支えられております
本当に感謝しております。
いつもありがとうございます。
てんてんmamaさんに捧げる『風』
お楽しみ頂けたら幸いです。

でんべ。