私は、美紀のお通夜にも葬式にも出ず、東京の街を人ゴミの中、ただ、ひたすら歩いた。

美紀の言葉を何度も、思い浮かべながら

「恵里、私の分まで医者になって、患者を救ってね」

私は手に爪のあとが、つくほど強く手を握りしめて

私は、あんたみたいな天才じゃないのよ!

私にできるわけないでしょ!

何度も自問自答して、葬式の日の夜、私は完全に酔っ払うほど飲んで人気のない道を、わけがわからないまま歩いていた。

そこに、男三人が現れた。

「こんな上玉の女に会えるなんて、今日は運がいいぜ」

そう言って狼三人は、私に向かってきた。

だが、その瞬間、三人の狼をあっという間に一人の男が倒してしまった。

そして、私の頬を引っ張たいた。

「馬鹿野郎!こんなところで何やってるんだ!」

私は目が虚ろになりながら

「国谷先生・・・・・・」

私は泣きながら、国谷先生の胸に飛び込んだ。

国谷先生は私の頭を撫でながら

「恵里ちゃん、癌は治る病気だ。

君が、今回の経験を生かして、癌患者を救うんだ。

外科医の技術と内科的治療の発達・そして、患者の家族の協力と心療内科医が、癌患者を救う。

だから、それを医者になって成し遂げるんだ。

最初から言っておく。

美紀ちゃんは、十年に一人の天才だ。

誰も君に、美紀ちゃんのようになれとは言わない。

だが、人は生きてる限り自分の最善のできることを、しなければならない。

美紀ちゃんのように、生きたくても死んでいく人は、たくさんいる。

人が何故、生きてこられたか考えたことがあるか?

それは、私達が食べてる食事、動物・野菜・作物、全てが生き物だ。

そして、その生き物もまた、生き物を食べてそうやって成り立ってるんだ。

人が何故生きていけるのか、人も動物であることを前提に考えて、より、謙虚になることが、必要だ。

そして、その上で自分のできる最善のことをやる。

それが、自分を生かしてくれてる全てに感謝するということなんだ。

これからも、生きてる限り、悩み苦しむだろう。

医療に関わる者なら、尚更だ。

人の生死に関わる仕事だから、何よりも重い仕事だ。

だが、逆に言えば、それだけやりがいのある仕事でもある。

患者が、無事退院していく姿を見るのが、何よりの喜びだ。

そのために、医療を携わる者はいるんだ。

だから、君は看護婦に成りたいと思ったんだろ?

医者だって同じだ。

一人でも多く救える患者を救いたい、もちろん、医療には限界はある。

だが、医療は我々の努力次第でどこまでも、発展する。

美紀ちゃんが、理想の医療を目指したのも、そのためだ。

初心忘れずべからず、何があろうとその気持ちを大切にして、医療を発展させて、患者の命を救う、それが、我々の使命だ。

そして、君がこれからすることだ。

医者になって、一歩・一歩前に進むんだ。

自分のできる最善のことを、考え続けることに意義がある。

それが、一歩・一歩前に前に行動し進むということなんだ。
アレクサンダー教授も、仰っただろ。

全ての科を極めてこそ、本当の医者だってな。

ま、あの方は医者の神様だ。

全てを極める事は、誰にも不可能だ、医療はそれほどまでに深い。

だが、外科・内科・心療内科、この三つはできる限り、自分の知識としてのばす必要がある。

それが、患者を一人でも救うために必要なことだ。

私が、教えてやる。

医療をやる者として生きるということが、何かということをな。

一人でも多く、理想の医療のために、努力する人間が必要なんだ。

だから、私は医療をやると同時に医者を育ててきた。

それと、はっきり言っておく。

美紀ちゃんのオペに関して、君に非はまったくないどころか、予想を遥かに越えて君は頑張った。

だから、高村は、オペを終らせることができた。

高村の腕では、オペを終らせることすら、できなかった。

そう、本来なら美紀ちゃんのオペは内科的治療をしてから、行わなければならない、それは、画像を見れば明らかだ。

癌患者のオペ成功率90%という慢心が、ミスに繋がった。

だから、君は今回の件を生かして、自分に慢心せず、前に進むんだ。

何があろうがな。

私が、君に教えられることを教えてく。

君は努力を、少しずつしながら前に進む。

約束だ」

私は頷いた。

美紀の言葉が私の頭に浮かぶ。

「恵里、あなたは皆の太陽だよ。

だから、恵里は太陽でなきゃ駄目何だよ。

皆が、幸せになるためにね」

私はそのまま、泣き続けた。