そして、この墓に二人の男が現れた。

小山誠実・石川明の二人である。

「よ。二人共、久しぶりだな」

私達は驚いて

「どうしてここに?」

明は沈痛な顔をして

「今回の件を仕組んだのは、この人以外、いないだろうからな。

だから一度、墓参りに来たかった。

それと亡き新井教授の墓参りにもな」

そして、墓参りが終わり

明は私達を近くにある蕎麦屋に連れて行き

椅子に座った後

「ここの店は、新井教授の行きつけの店なんだ。

一樹は、お祖父ちゃん子でな。

結構、墓参りに来てたんだ。

患者が、死ぬ度に命日の次の日にな。

命がいかに大切かを、一樹に教えるためにな。

二人患者が運び込まれた時、より重症の患者からオペをすることになるが、もう一人がその間に急変して亡くなるという不可抗力のこともあるからな。

新井教授の性格を表してるよな」

新井一樹はそこから、自分自身で話しを始めた。

「俺は、祖父を心から尊敬してるが、一つだけやってはいけないことをやった。

それは、たった十五で金崎家の令嬢を妊娠させてしまって、祖母は金崎と親子の縁を表向き切って、新井家で妻子共に面倒を見てもらったというわけだ。

だから、祖父と金崎は裏で繋がることができたというわけだ」

間をおいて

「それにしても、真田美紀。

まさか、祖父の墓参りじゃなくて、金崎の墓の前で会うとは、因縁っていうのは、凄いものだな。

ま、今回の件の後だから、必然とも言えるが、祖父のお気に入りの二人に会えるとは嬉しいよ。

明や誠実が、一目置くのもよくわかる」

と最後は二人の男を笑みを浮かべながら話した。

二人は苦笑いしながら

明は私を見て

「それにしても、恵里までこの場に来るのは驚いたけどな」

「小山事務次官に教えていただいて」

「なるほどな。それだけ次官のお気に入りというわけか。

ますます、お前を気に入った。

今日の夜、五人で飲みに行こうぜ」

こうして私達は、五人で飲みに行った。

医学の話しで盛りあがった。

美紀と一樹の二人が熱く語り、私と明の二人も内科の見解と外科の見解を合わせて語り合った。

私達四人の中に、誠実は入ることができず先に帰ったものの、本当に楽しかった。

そして、車を明は呼んでくれて学生寮に送ってくれた。

明と一樹は笑みを浮かべて

「一樹、いつもクールなお前が、ああも俺達以外の相手に熱く語る姿を初めてみたよ」

一樹も笑みを浮かべて

「お前こそ、本当にあの恵里ちゃんが好きなんだなぁと感じたよ。

数合わせに誠実に来てもらったけど、必要なかったみたいだな。

俺は、美紀にデートを申し込む?

お前はどうする?」

明は笑みを浮かべて

「俺も、もちろんデートを申し込む。

そろそろ、恋人同士に恵里とはなりたいからな」

二人はガッチリ握手した。

その頃、恵里と美紀も上機嫌で

「楽しかったね。美紀。

美紀が私以外であそこまで熱く語ってる姿、初めて見たよ」

美紀も満面の笑顔を浮かべて

「さすがは新井教授の孫だけあるよ。

私と本気で、一歳年上のレベルで医療で語り合える人がいるとは思わなかったよ。

そういう恵里こそ、あんな姿、初めてみたよ。

恵里が医療であんなに熱くなって、本気で議論するなんてね。

私の方が驚いたよ。

恵里が、人を救う時、以外で熱くなることなんてないもんね」

私達は笑いながら

「明相手だと遠慮なく話せるんだよね。

あんな人初めて。

美紀もそうなんじゃない?」

美紀も頷いて本気で喜びながら頷いた。

「本当に一樹との議論は楽しかった。

こんなに楽しかったの初めてだな。

恵里以外で、ここまで楽しいと思わせてくれる人なんて、今までいなかったから」

美紀は一筋の涙を流した。

私は美紀の頭を撫でながら

「美紀、重いもの、そろそろおろして、一樹と分けあいなよ。

一樹なら、全て受け止めてくれると思うよ」

美紀は泣き笑いをしながら

「ありがとう。恵里」

と笑顔を浮かべた。