太古の昔、全ての頂点に君臨する神であるカンヘルは、この世界を造った。

誰もが笑って暮らせる世の中をつくるために・・・。

だが、カンヘルには同等の力をもつ巨大な敵がいた。

その種族は、自分の欲望のために世界を支配することを目的としていた。

世界を自分達の思い通りにコントロールするために・・・。

カンヘルとその種族の戦いは、壮絶な戦いの末にカンヘルは死んだ。

だが、その種族も力を使い果たした。

しかし、彼らはカンヘルの死後、人間として世界をコントロールし、操り続けて現代に至る。

世の中は、闇にまみれていた。

だが・・・。カンヘルには娘と娘の赤子がいた。

カンヘルは、現代に二人を送り込んだ。

世の中に光を取り戻すために・・・。

再び、人間の枠の中で未来をかけて戦いが始まろうとしていた。

透き通った海の海辺に、四・五歳の少年二人と少女二人が笑顔で遊んでいた。

幼いながらも、凛とした顔立ちをした少年とクールで頭がきれそうな少年が、木の棒で対決していた。

少女二人は、ワクワクしながら楽しそうに二人の対決を見て、二人に声をかける。

目をくりくりさせた少女が笑顔で

「頑張れー。優斗!」

「負けるなー。雄介ー。」

優斗と呼ばれた凛とした顔の少年は

目をくりくりさせた少女を見ながら

「ああ、任せろ。雄介は俺が倒す!

そこで見てろ。清美。」

クールな少年も言い返す。

「清美、俺が優斗を必ず倒してやるから見てな。」

もう一人の少女は、顔を膨らませて

「私はー。何で清美だけに答えるのよ!」

優斗も雄介も爆笑しながら

「別に無視したわけじゃねぇよ。

男女の幸子より、女の子らしい女の子の清美の方が大切にされる。

それが、世の中の摂理だ。

嫌なら、清美を見習うんだな。」

そう言うと、二人は再び向き合った。

雄介は、正面きって木の棒を振りかざした。

優斗は、正面きって受け止めてはねかえした。

雄介は、一歩下がるが、今度は優斗が斬りかかった。

鋭い攻撃を雄介も受け止めて十合・二十合とぶつかりあい、優斗は少し下がって連続して突きを繰り出した。

雄介はたちまち防戦一方になったが、清美の顔を一瞬見て鋭い反撃をする。

優斗は紙一重でかわして、突きを雄介の腹部に当てた。

雄介は悔しそうに座り込んだ。

そこに清美が笑顔で声をかけた。

「雄介、こんなのただの遊びなんだからそんなに落ち込まない。

雄介は、カウンターに力を入れすぎなんだよ。

だけどカウンターは、失敗すると致命傷になる。

だから、攻撃に力を入れてみなよ。

攻撃は最大の防御だよ。

パパの受け売りだけどね。」

清美の父は、月島望といって、小学五年生~東大の四年までサッカーで12連覇した天才サッカー少年だったのだ。

しかも、空手六段・合気道六段・柔道六段・剣道六段の猛者である。

今は、会計事務所を設立し公認会計士として、経済界の革命児と呼ばれていた。

会計士の仕事は、企業のコンサルティング業務・企業の監査を行う。

企業が成長する=経済界の発展につながる。

だから、清美は父を尊敬してるのだ。

誰よりも日本のことを考えてる父のことを・・・。

そして、清美は将来、一人娘として会計事務所を継ぐことになっていた。

清美は、父と一緒に仕事ができる日を心から楽しみにしていた。

雄介は清美の温かさに涙をぽろりと流しながら

「ありがとう。清美。」

清美は、首を振った。

清美は幸子を見て

「今度は私達の番だよ。幸子。」

幸子は頷いた。

二人はビービー弾の入った銃をもって向かい合った。

二人共、防弾のものを着て勝負を始めた。

二人は、銃と銃で撃ち合い、ビービー弾同士がカチリカチリとぶつかりあった。

二人の腕はまったくの互角。

弾は残り一発という状況になり、二人は接近戦に持ち込んだ。

二人は銃を構え、二人共に右横に飛びながら撃った。

清美は足に当たり、幸子は胸に当たった。

でも、胸に着実に当てた清美の勝ちだった。

二人共に防弾のものを着てたため、怪我はなかった。

でも、優斗も雄介も心配そうな顔をしながら二人を起こした。


優斗は、天城優斗といって官房長官の秘書の息子。

四人のリーダー的な存在。

雄介は、国島雄介。警視庁捜査一課課長の息子。

将来は警察庁長官か警視総監になるといわれてる人物が父なのだ。

雄介も、父のような警察官になりたいと思っていた。

幸子は、倉橋幸子といって、倉橋久光元首相の孫娘なのだが、親は両方とも医者という変わった両親だった。

だが、世界的な外科の権威で多くの人を救ってきた名医だった。

幸子は、将来、両親のように多くの患者を救いたいと考えていた。

この四人の出会いは、パーティー会場だった。

清美の父の望が、ある中小企業が大企業に成長したことで、パーティーに呼ばれて、清美も来ていた。

医薬品も多く販売してたこともあり、幸子も両親と一緒に来ていた。

そして、優斗も官房長官秘書の息子として来ていたのだ。

雄介は、事情は他の人とは異なるが、偶然とはいえ四人は出会った。

もちろん、この時は挨拶だけだったが、四人は幼稚園も一緒で最初は親の自慢話ばかり四人はしていたが、いつしか互いを認めあうようになった。

そのきっかけが、三歳の時のことだった。

小学生が、幼稚園児に暴力をしてる時に、四人は迷わず飛び出した。

四人は、すでに格闘技を習っていたため、小学生など問題にならない相手だった。

四人は、親の仕事のこともあり、自分の身は自分で守れなければならないため、英才教育を受けさせられていた。

そして、正義感も四人は強かった。

あっという間に、小学生を倒してしまった。

この時から、仲良くなって四人は行動を共にするようになった。

人を守り、万引き等の犯罪を未然に防ぐ。

万引きした商品を使って、殺人をしようとする人間も時にいたりする。

四人の子供の姿から、殺意が消えたといった大人もいた。

子供の存在は、時に殺意すら浄化してしまうこともあるのだ。

そして、四歳の時に四人は表彰された。

四人は偶然にも誘拐されてしまったのだ。

その時に、誘拐犯人の一人が清美に近づいてきた。

男は仮面を取った。

「初めまして。月島清美さん。

伝説的なエージェントと呼ばれた栗岡菊代の孫娘にして、表裏世界のドンと呼ばれる松山慶一郎の曾孫でもある。

私の名前は、木戸小五郎。

君と仲間達に来てもらったのは、これから東京を舞台にショウを始める。

それを、君に観てもらおうと思ってね。

その上で君の意見を聞かせてもらおうと思ってね。

伝説のエージェントの孫娘としてね。

もし、君の意見が、私を納得させるものなら四人共に無傷で解放するが、君が私を納得させることができなければ、君達四人を殺す!」

最後の方はニヤリとして言った。

そう、この事件こそが、全ての始まりだった。

木戸は鮮やかに、この当時の官房長官の孫を誘拐してみせた。

木戸は厳しい表情で清美に言った。

「あの官房長官の国見正明は、この日本を過去の日本に戻そうとしているのさ。

日本を守るには、武力が必要だと言ってな。

日本が、アメリカに操られるのも自分の国を守る力がないからだ。

だから、武力を持ち国を守る。それが、こいつの考えだ。

だが、過去で日本が何をやったのか、それを、本当の意味で理解してる人間は、こういう馬鹿げた考えはしない。

人は欲望の生き物だ。

そんな玩具を今の馬鹿共に与えてみろ。

過去の日本と同じ過ちを繰り返す。

人はそうやって同じ過ちを繰り返すんだ。

ならば同じ過ちを繰り返さない方法は、玩具そのものを無くすことだ。

私は、そのためなら手段を選ばない!」

と強い口調で言った。

過去の日本がやったこと、それは自分達の欲望のために諸外国を侵略し、好き放題にやったという過去がある。

日本がアメリカに負けるまで、日本は過ちに気づかなかった。

だからこそ、憲法九条ができたのだ。

その意味を本当に理解してる人間なら、武力をもとうなどという発想そのものがでてこない。

だからこそ、木戸にとって過去の日本に戻さないことが彼の正義だった。

清美は真剣な表情をしながら言った。

「それなら日本がアメリカに従わなくても済む方法に対するあなたの考えはあるの?」

木戸は不気味な表情をしながら

「いくらでもあるさ。我が木戸家の力を使えば造作もない。

だから、勝手なことをされちゃ困るのさ。」

裏世界の男の目になっていたが、清美は怯まなかった。

「だったら、こんな馬鹿げたやり方をしなくても方法はあるでしょ?」

木戸は苦笑いしながら

「残念ながら、国見という男には大きなバックがいてね。

松山慶一郎でも手が出せないほどの大物なのさ。

だから、大物を表舞台に引きずりだすために事件を起こすことに決めたというわけだ。」

と真面目くさって言った。

清美は臆せず言った。


「だったら、一級捜査官を使って調べればいいじゃない!

裏世界を彼らは知り尽くしてる。

餅は餅屋じゃない?」

木戸は苦笑いしながら

「捜査員なら、何度も潜り込ませたが遺体となって発見された。

それほどの相手だということさ。

殺した犯人のコードネームが、ミクトランテクートリというらしいことだけはわかってるんだがな。

これ以上、捜査員を死なせるわけにはいかない。」

木戸はいつしか、本音で四歳の女の子と話していた。

正確には、清美に本音で話させられていたと言った方が正解かもしれない。

他の三人も呆然としてその光景を見ていた。

木戸は、犯行を実行にうつそうとしたところに警察が乗り込み電光石火で解決した。

木戸は清美を見て苦笑いした。

清美と木戸の会話は、堺義弘に筒抜けだった。

堺義弘は、父、望の無二の親友で一級捜査官の隊長的な存在だった。

堺警視正は、清美を見るなり抱き上げて

「清美ちゃん、お手柄だよ。

国見に勝手にそんな仕掛けをやられちゃ困るからね。

あんな小物に仕掛けたところで巨悪にとっては痛くも痒くもない。」

この事件は極秘に解決したが、四人は警察庁長官直々に表彰された。

清美一人の手柄が、四人の手柄になったと誰もが思ったが、雄介は父に・優斗は知り合いの公安幹部に連絡して、幸子は父が、警察庁の上層部と知り合いだったため電話をかけっぱなしにしていたというわけだ。

その話しを聞いた松山慶一郎は、四人のことを天真爛漫カルテット又の名を暁の四戦士と笑いながら名付けたのだった。