美紀は、今の世の中を過去の英雄達のように変えたかった。

誰もが、笑顔で暮らせるような日本になってほしかった。

美紀は、無念の死をとげた英雄達の気持ちが今ならよくわかると思った。

例えば斉彬・劉備・孔明・大久保・木戸・高杉・武市・隆元等、理想を実現できないまま死んでいった英雄達の気持ちが。

でも美紀には、希望があった。

それは、恵里という誰よりも信用できる人間がいてくれるからである。

美紀は、恵里がいなければ病気を聞いた時闇の中に、おちた状態でオペをするはめになっただろう。

だが美紀には、恵里という最高の親友がいる。

そして、美紀の妹の愛が、見舞いにやってきた。

「お姉ちゃん、遅くなってごめんね。」

美紀は、笑顔で言った。

「愛、よく来てくれたね。

でもあなたは、これから大学受験でしょ。

本当に、お姉ちゃんのことを思うなら勉強に専念して希望の大学に入りなさい。」

美紀は、本当に凄かった。

強がりでも何でもなく、普通にそういう言葉がでてくるのだから。

そして、家庭と助教授という立場を見事に両立させてる頼もしい母である、里見の存在も大きかった。

父が、仕事にあれだけうちこめるのも里見の存在があるからである。

里見は、いつも家族に言ってることがある。

「皆、笑顔で人と接してね。

笑顔は、幸を呼ぶからね。」

まさに、里見の言う通りだった。

人と人のつながりが、仲間との横のつながりを広げていくのだ。

そして、それが幸せいや幸運をもたらすことになる。

美紀にとっては、恵里との出会いがまさに、幸であると言えた。

美紀は、恵里に出会ってから笑えるようになったし、友達も増えた。

美紀の前に、吉岡が現れた。

「吉岡さん、ご無沙汰してます。」

「まさか美紀ちゃんが、病気になるとは、驚いたよ。」

「私も、驚きましたよ。」

「それは、置いといて君に言わなければならないことがある。

それは、宮藤が倒れた。

これでようやく、黒幕が動き出すだろう。

もっとも漆原のような厄介な男が、ナンバー2になったとなるとよけいに厄介になるな。

あのあくまの知恵をもつ奴は、厄介だ。

もしかしたら、宮藤に毒薬を飲ますというのもありえるかもな。

これからが、正念場だ。

美紀ちゃん、必ず病気を治せよ。

私も必ず、黒幕までたどり着いてみせる。」

漆原とは、組織のナンバー3にして、その下に中枢を担う幹部である岩月を始めとしたメンバーがいるというのが、内閣調査室の予想なのだ。

漆原は、もっとも冷徹な男で、FBIやCIAから、要注意人物として睨まれている人物なのだ。

しかし、顔を出すことはほとんどないために、動向が読めないのだ。

だが、宮藤が倒れたとなると状況が変わってくる。

美紀は、言った。

「でも逆に言えば、黒幕に近づきやすくなったとも言えるんじゃないですか?

何せあらゆる部署から目をつけられてる人物がナンバー2に本当になるのだとしたら、黒幕まで一直線ですからね。」

だが、おそらくフェイクだろう。

漆原を、だしにしてあの悪魔が考えているのは何なのか?

それを、見つけ出さなければならないのだ。

だが、その悪魔も伊島が言った憶測にすぎないのだから。

そもそも伊島に、黒幕と関わる機会があったとも思えなかった。

でも、黒幕が身近にいるのだとしたら、可能性はでてくるわけである。

吉岡は、悩んでいた。

「フェイクなのかどうなのか本当に悩まされるよな。

けど、可能性が有る限り調べるのが私の仕事だ。」

そういうと、吉岡は、美紀に

「君も病気何かに負けるなよ。

君を、待ってる患者は山ほどいるんだからね。」

そういうと吉岡は、出ていった。

そして、美紀の前に黒幕と疑ってる男が目の前に突然現れた。

男は、言った、

「美紀ちゃん、その様子だと私の事を知ってるようだね。

ま、君の様子を見ていればよくわかるよ。

半信半疑と言ったところかな?

だが、残念だが私じゃないんだ。

私は、本当はイギリスの諜報員なんだ。」

美紀は、驚愕した。

つまり、イギリスはそこまでせまっているということである。

「黒幕は、誰かわかっているんですか?」

男は、苦笑いながら言った。

「もし、わかってたらとっくに組織を潰してるよ。
つまり、それだけ奥が深いということさ。

私の事は、誰にも黙っておいてくれ。

どこに敵が、いるかわからないのがこの世界だからな。」

そういうと男は、出ていった。

美紀は、よけいに謎が深まったがいつでも殺せる相手に嘘を言う理由もないだろう。