美紀は、国谷と高倉の話しを聞いて茫然としてしばらく動けなかった。

一番驚愕したのが、新井が殺された事である。

誰もが、病死と思っていたものが、実は殺人だったのだから。

それも響子の父が、気づいた本人でありながらそれを公にしなかったというのだから。

つまり、それだけ今は慎重に動いているということである。

そして、高倉がFBIの潜入捜査官であること。

捜査官でありながら、一から医学を学び日本一の外科医にまでなった人物であるということである。

それほどまで長い間、組織に潜入しているということである。

美紀は、高倉の執念は敵も味方も欺くほど凄いものであるということを改めて気づかされた。

そして、十年後金崎の策が実行されても真の黒幕までたどりつくことはできないかもしれない可能性もあるのだ。

となると高倉が、一番の頼りということになるのだ。

しかし、高倉だけに任せていいはずもなかった。

その頃響子は、日本第二の病院と呼ばれる天道病院に研修に行った。

ここで響子は、肝臓の病気に関する勉強をすることになった。

肝臓に関して世界でも五指に入る名医と呼ばれる工藤教授が、この病院にはいるのだ。

肝臓の病気は、まず誰でも知ってる脂肪肝・肝臓癌、そして、脂肪肝が、肝臓癌・肝硬変といった大病に発展し、最悪死に至るというわけである。

肝嚢胞・肝嚢胞・うっ血肝という病気も存在する。

順に、どういう病気か書いていくと脂肪肝は、単純性脂肪肝
肥満によるもの

アルコール性脂肪肝
アルコール性肝障害によるもの

非アルコール性脂肪肝(NAFLD:Non-Alcoholic Fatty Liver Disease)
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:Non-Alcoholic Steato Hepatitis)によるもの

内臓に、脂肪がつき、肝機能が低下すると疲労しやすい、体がだるい
・お酒が弱くなった、ひどい二日酔いをするようになった
・食欲の低下、吐き気、発熱など、風邪に似た症状が出る
・白目の部分が黄色くなって、黄疸が出ている
・右の肋骨の下に鈍い痛みがある等の症状が出てくる。


肝嚢胞は、肝臓の中に水の溜まった袋ができる病気で、1個だったり、いくつか複数個できていたりする病気である。


肝嚢胞は、基本的に良性なため症状はない。

悪性の場合は、他からの転移の可能性等がある。

そして、誰もが知ってる恐ろしい病気である肝臓癌である。

肝臓に悪性の腫瘍ができて、初期の段階では、沈黙の臓器であるために症状はでてこない。

皮膚が黄色みをおびてきた、白目が黄色みをおびてきた、尿が番茶色になることがある、腹部に膨満感を感じる、息苦しいことがある、理由が思い当たらないが体重が減っている、食欲があまりわかない、お酒がまずいと思うことがある、など、一見、体調不良と思ってしまうような症状が、肝肝臓癌の症状としてでてくることがある。

ちょっとでも医学知識があれば、風邪でもないのに原因不明に身体がだるければ血液検査をしようと考えるが、普通はただの疲れであろうと考えるために気づかないので危険なのだ。

肝臓の病気は、だから恐ろしいのだ。

そして、肝硬変は肝臓病の一つである。慢性の肝障害が進行した結果、肝細胞が死滅・減少し線維組織によって置換され、結果的に肝臓が硬く変化し、肝機能が減衰した状態を指す。

最初にみられる症状は脱力感、掻痒感、筋肉痛、体重減少など非特異的症状が多い。病期が進行し非代償期に入ると合併症により多彩な症状を呈する。腹水による腹部の膨満感やむくみ、消化管の静脈瘤の破綻による吐下血、脳症による意識障害・昏睡、食思不振・悪心・嘔吐などである。その他、男性ではインポテンスや性欲減退、女性化乳房、女性では月経不順を認めることがある。

というように、早めに病気に気づくことができればいいが、沈黙の臓器であるために初期段階で見つけるのは難しいのだ。

だからこそ、日々の生活や食に気を使わなければならないのだ。

だが、職業もしくは会社の幹部である場合には食や生活を規則正しくするのは難しい。

つまり、悪循環になってしまうのだ。

そして、もう一つがうっ血肝

心不全があって肝臓の血液が心臓に戻りにくくなっていると肝炎の様な肝機能異常を示すことがある。

・軽い黄疸
・肝臓の痛み
・全身のむくみ
・腹水
・心肥大
・頻脈
・呼吸困難
・チアノーゼ

等の症状がある。

響子は、勉強すればするほど悩むには十分だった。

そして、そのうちの理由の一つが自分自身であるのだ。

それは、自分の父が偉大すぎるために極度の緊張をいつもしている、つまり、肝臓の病気なのか緊張の病気なのか判断ができないということである。

響子の緊張を解きほぐすのは、恵里と仲良くなるまで待たなければならない。

結果的に、新井の遺言を恵里は果たしたというわけである。