一人の少女が、海辺を笑顔で走っていた。

そこに中学二・三年の少年が二人日光浴をしていた。

そんな時である。

一人の男の子が、海に流されそうになっていた。

そこを二人の少年が、勢いよく海に飛び込み、少年を助け出した。

そして、偶然そこに居合わせた医者が見事に人口呼吸をし、少年は息を吹き返した。

少年は、救急車で病院に運ばれ、その医者の応急処置が良かったために助かったらしかった。

二人の少年は、子供を救ったことでその場で表彰された。

国谷秀一・真田俊介は、二人の将来の天才外科医は、この時、人を救う素晴らしさを知った。

そのことによって、二人は医者を目指すことになった。

そして、一人の少女は少年二人のかっこよさを見て、自分もああいうふうなことをしてみたいと思った。

真田美紀四才だった。

美紀は、俊介にベッタリだった。

俊介も十歳年下の妹を可愛がった。

俊介と秀一は、親友同士でこの二人と美紀は必ず一緒に行動した。

秀一も、本当の妹と接するかのように可愛がった。

そんなある日、美紀の父真田勇蔵は、厚生労働省で出世の道を歩いていたのだ。

勇蔵には、盟友といっていい存在が四人いた。

一人は、この当時厚生労働省局長の小山・そして、警察庁刑事局長の田所である。

この当時の文部省の課長井島・そして、無二の親友である警察庁警備局長の滝沢、この当時、保険局医療課医療指導監査室室長の真田は、理想の政治を成すために強力な仲間を味方につけていた。

そして、五人はとてつもない巨悪を追っていた。

この当時、首相である高野の背後にいる巨悪でもあった。

そいつの息のかかった人物が、北栄総合病院と東條病院にいたのだ。

その当時、外科部長として神業のようなオペの技術をもっていたが、汚い金を平気で動かすような人間でもあった。

この二人の背後には、恐るべき大物がいるのだ。

五人とも確信を、もっていた。

高野首相すら、裏で動かす大物、その男の名を金崎光男、世界の裏のドンと呼ばれ、表向きは大企業の社長兼通産大臣という立場である。

この男は、文字通り日本を牛耳っている人物だった。

五人は、協力して追いかけたのだが、口封じに二人の外科部長は消されたのだ。

そして、五人は謎の出世をすることになった。

五人に、手紙が書かれていた。

「外科部長の一件をこれ以上追えば命はない。」

銃弾が、手紙と一緒に入っていた。

真田は、こうして最年少の厚生労働省の課長に就任、滝沢は警察庁次長に出世・田所は警視監に出世・井島は大阪で局長に出世し、小山は、厚生労働審議官に出世した。

田所と滝沢は、政治家にこの時転身することにしたのだ。

だが、父である真田が悔しがってる姿を美紀は見てしまったのだ。

そして、「金崎め!」
と言ってる姿も美紀は偶然見てしまった。

つまり、美紀は始めから真の敵が誰なのか知っていたということである。

でも、世の中にはどんなに望んでもできないことというのも存在することを、誰よりも尊敬する父が苦しんでる姿を見て四才の美紀は悟ってしまったのかもしれない。

美紀は、それだけ頭が良かったということでもある。

そして、人前で芝居をする必要性も美紀は理解していたのだ。

自分が、何事もなかったように無邪気に遊んでる姿を見れば、その場を明るくすることができると美紀は考えていたのだ。

真田は、課長から上に行くまでに時間がかかったのは、一度は降格処分を受けて、課長に再びはい上がったのだ。

そのために、課長の時間が長かったのだ。

全ては、金崎を潰すためである。

八年の月日が流れ、国谷と俊介の二人は最年少の医者となった。

国谷と俊介は、アレクサンダー教授の指導の下、天才的な才能を発揮して、日本に戻ってきて一流の医者として活躍したのだ。

美紀は、二人の活躍を間近で見ていた。

そして、医療とは何なのかというのを本格的に考えるようになった。

医者・看護婦が、一心同体となって一人の患者を診ることの必要性、それを本当の意味で成すにはどうするべきか?

美紀は、考えに考えた。

国谷や俊介を、自分が越えてみせるということまで美紀は考えていた。

その考えの一端には、自分が本物の外科医になれば金崎という男に出会えるかもしれないという気持ちすらあったのだ。

そして、偶然金崎に美紀は出会ったのだ。

美紀は、最初から金崎であることがわかっていた。

そのため、ジーット金崎を見ていた。

金崎の方から、美紀に近づいてきた。