恵里は、新井からもらった膨大な内科の資料と詳しく解説された資料をもとに、留学をするまでの1ヶ月間猛勉強をした。

美紀も同様に、恵里の資料をもとに勉強し、二人は内科についてあらゆることを話し合った。

実は、恵里と美紀にはこの膨大な資料をもとに1ヶ月で論文を書くという宿題があった。

その論文を、アメリカの内科の権威に読んでもらうことで、二人がどれだけ現時点で内科を理解しているかを確かめるのが目的である。

二人は、論文を書いてアメリカに留学したのだ。

ついに恵里は、内科の権威と呼ばれ、世界の医学会から医者の神様と呼ばれるルード教授との出会いを果たした。

ルードは言った。

「君達に、最初に言っておくことがある。

私は、君達を本当の娘だと思うことにするから、君達も私の事は、本当の父だと思ってくれ。

君達の、教授である新井は私の弟弟子でね。

それで将来有望な君達を、紹介されたというわけだ。

わからないことがあったら、何でも聞きなさい。

どんな疑問にも答えてあげよう。

まずは現時点での、君達の内科に対してどの程度理解しているか確かめたいから論文を出してもらおうかな。

今日は、君達は私の書斎で本を読んで待ってなさい。

一人ずつ呼ぶから。」

恵里達を、書斎に連れて行き、二時間たった後まず美紀が呼ばれた。

ルード教授は、言った。
「君の事は、私の自慢の弟子である国谷秀一からよく聞いてるよ。」

「国谷先生が、ルード教授の弟子何ですか?」

「そうだ。まさに医者になるために生まれたような男だ。

君の論文を読んでると、初めて秀一が私のところに来たときのことを思い出すよ。

美紀、君には大きな欠点がある。

はっきり言おう。今のままでは君は、医者にはなれない。

それをよく、留学の三ヶ月間の中で考えなさい。」

次に、恵里が呼ばれた。

「古波蔵恵里ちゃん。君は赤ん坊みたいな娘だね。」

ルードは、笑いながら言った。

「君は、あらゆることが疑問だらけになってしまっているようだね。

そして、何らかの心の傷がそうさせてしまっているんだろうね。

君の場合は、まずカウンセリングを行う必要がある。

今のままでは、君は一歩も前には進めない。

安心しなさい。

私なら、簡単に君の心の
傷を治してあげれるから。」

そう言うとすぐにカウンセリングに入り、恵里を本来の恵里にあっさり戻してしまったのだ。

ルードは、この時恵里の心の傷のあまりの深さに驚いたのだが。