ついに当日、桜子と達彦の演奏会の日がきた。

と言っても達彦と連弾する曲は、きらりだけである。

達彦が、自らそれを望んだ。

その理由は、曲の一つ一つが桜子の想いが詰まった人生とも言うべき曲だからだ。

自分の子供への曲なら自分の全ての想いを、ぶつけることができるためきらりだけは連弾できるというわけだ。

そこで桜子は、達彦にサプライズを提案した。

こうして、演奏会が始まった。

一番星から始まり、曲は流れ、観客はあまりの素晴らしさに声もでなかった。

そして、輝一のためのきらりを二人は魂込めて弾いた。

そして、桜子は達彦に捧ぐで幕を閉じた。

誰もが、これで演奏会は終わったように見えたがここにサプライズがあった。

桜子が席を立ち、達彦が座り、月光・情熱・ノクターン大二番・英雄・ピアノソナタ18番を弾いて見せた後、桜子と二人でキラキラ星・愛の夢三番・第9を弾き・桜子単独でセントルイスブルース・陽の当たる街角で・そして埴生の宿を弾き・そして、最後に桜子編曲のふるさとを二人で弾いて幕を閉じた。

観客は、拍手喝采で、家族や同志達は涙を流してこの二人の活躍を喜んでくれた。

桜子と達彦に、マイクが向けられた。

桜子は言った。

「私が、音楽を始めたのは亡き母の影響です。

そして、亡き父の影響でジャズの素晴らしさを知りました。

父は、言っていました。

ジャズには、人を元気にする力があると、それともう一つ桜子のやりたいことだったらどんなことをしたって応援する。だからやれるところまでやってみろ。この言葉で私は、私の弾くピアノで人を幸せにしたいそう思いました。

いろんな人に、助けられてここまでくることができました。

私達のピアノを、聴いていただきありがとうございます。」

達彦は、桜子に話すのを任せた、桜子にはどこまでもピアニストとして輝いてほしい、自分は山長の当主としての指命がある、桜子こそが俺の夢なんだと改めて今日の桜子のピアノを聴いてなおのこと思ったのだった。

家族や仲間達と祝杯をあげ、

桜子と冬吾は、二人きりで話した。

冬吾は言った。

「桜ちゃん、最高だったな。

本当に、素晴らしかったよ。

今まで音楽をやってきて本当に良かったな。」

会心の笑顔で「うん。思う存分弾けたよ。本当に音楽をやってきて良かったって思った。」

そして、西野も絶賛だった。

「桜子さん、本当にすばらしかったわ。涙がでてくるほど嬉しかった。」

薫子は、「桜子、最高だったよ。親友として本当に嬉しいよ。」


斎藤は、「桜子さん、さすがです。

本当に良かったですね。亡きお父さんもお祖父ちゃんもきっと喜んでますよ。」

笛子や杏子も、「桜ちゃん、本当に頑張ったね。」と涙を流して喜んだ。

同志達と話しを済ました後、ユリと話した。

「桜子さん、あなた本当に後悔ないの?

あれほど素晴らしいピアノの腕を、持ってる以上世界に飛び出してピアニストとして挑戦するべきだと思うな。

山長の女将に、しとくのは勿体ないな。

あなたの旦那さんも、そうだけどね。

もしあなたに、世界に飛び出す気があるならいつでもいって。

私が、力になるから。」

「ユリさん、ありがとう。でも私は、山長の女将としてやっていく中でピアノを弾くって決めてるし、それに元気にしたい人達は日本にいますから。」

二人はここで別れ、ようやく達彦と二人きりになれた。

達彦は、「今日ほど気分のいい日はないよ。

桜子、今日ほど君と一緒になれて良かったと思ったことはないよ。」

「私もだよ。達彦さん。」


第一部 完