１９８７年（昭和６２年）４月２０日（月）　イルクーツク

　久しぶりの動かないベッドでゆっくり眠っていたかったが、今日はバイカル湖行きのツアーを予定している。８時過ぎに起きてまずはインツーリストのオフィスに行った。そしたら、二人で１万５千円もかかるという。あんまり高くて返事を渋っていたら向こうから1万円にディスカウントしてくれた。それでも約４０ルーブルは高いと思う。きっと外国人料金で日本円での支払いだろう。
　朝食のとき、日本人らしきツーリストに会った。彼らも個人ツアーのようだが、結局声かけずじまい。朝食後松戸のおじさん宅のお土産に、奮発してキャビアを買った。他にも例のマトリューシカ６段重ねのこけしも買った。

　１０時にツアーの出発を待っていると、日本人の顔をして日本語が上手なガイドさんが来た。移動は貸し切りハイヤーと贅沢だ。街中を抜けバイカル湖のほとりまで１時間半のドライブを楽しんだ。

　ガイドのミハエルさんは日本人２世でなんでも気兼ねなく聞けた。住宅のこと、今流行している音楽のことまで。列車の中で親子づれのお母さんが書いた文も読んでくれた。彼は日本にも行ったことがあるからこそ、ソビエトと日本の比較ができる。彼の立場としては裕福な方だろうが、どこか矛盾した問題をかかえている様子がチラと窺えた。

　バイカル湖までの道はひたすらまっすぐで、夫言わせると北海道ににているらしい。車が少なく、バス停もあるが一日に数本しかなさそうだ。途中何度もバイカル湖だと思って見たのはアンガラ川だった。この川も美しい。水が透き通って遠くから見ると青い。中国炳霊寺までのダムの色を思い出した。

　バイカル湖の河口で川の水を飲んだ。ホテルの水もきっとアンガラ川の水だろうけど、とてもおいしい。これまで飲んだ水のなかでも一番おいしいと思った。

　バイカル湖はまだ凍っていた。氷の厚さは１メートルもあり、そう簡単には溶けそうにない。氷の上を歩いてみると表面がキラキラ光っている。滑るのであまり沖の方までは行かなかった。この湖の透明度は４０メーターもあるそうだ。潜ってみたいものだ。

　外は晴れていたが気温は低い。あまりウロウロしていると寒くなる。ネパールからとっておいたホカロンを使えばよかった。

　昼食はバイカル湖のほとりにあるホテルのインツーリストで。ボルシチにビーフストロガノフとチャイでひとり１．５ルーブルと安かった。ミハエルさんから「これからどうしますか」と聞かれたので、ホテルの近くのマーケットで降ろしてもらうことにした。下町の普通の人たちの暮らしが見たかったから。

　マーケットでは造花が売られていた。お墓に飾るのではないかと思う。夫が写真を撮ろうとしたら、みんな顔をそむけた。大きな百貨店でトランプを買った。３ルーブルもした。娯楽品は高いようだ。

　それから私一人博物館に入った。その中で学生さんが声をかけてきた。私と同じくらいの英語力で最後に住所を教え合った。ペンパルになりたいらしい。千代紙もあげた。夫はアンガラ河畔の公園にいると、いろいろ売ってくれと言われ、先にホテルに戻っていた。

　夕食はホテルのレストランで取ったら、音楽もなくて１２ルーブルもかかった。チョコレートやウォッカが高い。〈Hotel　Intourist〉

二人で１万円もしたバイカル湖ツアー 移動は貸し切りハイヤーで日本人２世のガイドつき

二人で１万円もしたバイカル湖ツアー　移動は貸し切りハイヤーで日本人２世のガイドつき