きみよ、隙間を歌ってくれ(後編)
結局のところ。音楽は引き算だよ。Yさんは、そう教えてくれたんだと思う。それがひとつの答えだと。「10」あるものを削ぎ落とし、絶妙な「1」にして、残りは聴 き手に想像させる。白いキャンバスに絶妙な赤の一点を入れて、その余白からメッセージを彷彿させる。5分という音の芸術の中に魔法が隠されているとするなら、これだ。しかしながらも、当時の僕にはわからなかった。この話がしっかり腹の底に落ちたのは、ちょっと後のことだった。当時は、何時間もかけて心に血を流しながら書いた詞をオケに入れられなかった悔しさが大きかった。スタジオの時計は、14時をまわった。ドラムセットの前に出前のお弁当を広げた。みんなで輪になって座り込み、遅い昼飯を食べた。みんなの笑い声に合わせながらも、僕はまだ腑に落ちなくて心に嘆きを残していた。その数週間後。この曲はタイアップが決まって、沢山の人に聴いてもらえることになる。Yさんの言葉が深く身に刻まれた貴重な体験だった。いまも歌詞を書いていて思う。「隙間はあるか」と。おう。僕は、そう考えてる。