暑い日
今日はひどく暑苦しい一日だった。
汗がわっと噴き出す。
まさにそんな暑さだった。
冷房がキンキンと効いた職場から休憩がてら街へふらっと出かけた。
ネクタイを緩め、シャツの第一ボタンをはずす。
息苦しいまでの生暖かい風と、まるで見えるものすべてを焼き尽くすような日の光に耐え切れず
逃げ場を求めてビルの隙間の細い路地に入った。
軽くくだり坂の路地を下りきったあたりでなんだか懐かしい香りが私の鼻孔を刺激した。
様々な野菜とそれをやさしく包み込む、スパイシーな匂い。
とたん私の口中に夥しい唾液が溢れた。
それは紛れも無くカレーの匂いだ。
飲食店によくあるそれではなく、一家庭で築き上げられた匂いだ。
堪らない。
すかさず路地の両隣に悠々と聳え立つビルを見上げる。
どこだ!?
ひとり口ずさむ。
直後はっと『お前、食べる気か?』と自問自答する。
我を忘れた自分に危険を感じ、その場を離れた。
帰り自動販売機に好物のアンバサを発見し、今時そのチョイスに多少こだわりを感じつつひとり職場へ向った。
そんな午後だった。



